本研究は,自己相似性の定量化手法であるR/S解析法において導出されるR/S Pox Diagramのプロット形状が異常トラフィックに対して特徴的変化を示すことに着目して,これを利用した新たなトラフィック特性変化を表現する特徴空間およびトラフィック特性の可視化手法の提案を目的とした. 平成25年度は,前年度に提案した新たなトラフィック特性のR/S Poxレッグライン特性の実用性を考慮したトラフィック可視化システムの検討を行った.具体的には,特徴量の3値を用いたハースト空間を定義し,現在のトラフィック特性を空間内の1点にマッピングする可視化手法,さらに,R/S Pox Diagramに特徴量を示す回帰直線を表示する可視化手法を提案した.前述の手法では,特徴点の変動傾向により異常トラフィックの発生を認識することが可能となった.後述の手法では,周期性を有する異常トラフィックに対して回帰直線の傾きが変化することにより,異常性の認識が可能となった.実環境から計測された長期的ポートスキャン攻撃に対して適用することで,異常トラフィック検知手法の有用性を評価した. さらに,可視化システムの試作として,パケットトラフィックデータより評価対象とするパケット時系列を抽出して導出されたR/S Pox Diagramを可視化するWebアプリケーションを構築した.Webアプリケーション化することで,利用者のプラットフォームに依存しない運用が可能となった. 本研究の成果により,目的であるR/S解析法に基づいたトラフィック事象変化を検知するトラフィック特性,およびトラフィック可視化手法の提案が実現できたと考える.
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