本年度は、前年度までの研究成果である、基礎データの収集やシミュレーションのパラメータ定義の検討結果、ならびにシミュレータの設計とプロトタイプ実装を経て、実装の完成度向上ならびにパッケージ化によるソフトウェア公開を行った。 シミュレータの基本は、NS-3 を拡張した DCE (Direct Code Execution) という実装であり、これによって、ユーザが通常の DNS 運用に用いている DNS ソフトウェア実装を、そのままシミュレータの中で動作させることを可能とした。さらに、createzone というシミュレーションシナリオ作成ツールを実装し、公開した。前者の NS-3 + DCE は、DNS に限らない汎用的な実ソフトウェアによるシミュレーションを可能としている一方で、この createzone は NS-3 + DCE を、DNS に特化したシミュレータに変更させるための、設定ファイルとシナリオファイル作成ツールとなっている。この createzone は、運用環境にて記録した DNS のログファイルを読み込ませることが可能となっている。そのため、実際に運用されている DNS 環境において、DNSSEC が導入された場合のユーザに与える応答速度の影響や、DNS に関連するトラフィックの増加について、それぞれの環境に特化した正確なシミュレーションを行うことが可能となった。 本研究によるソフトウェア成果物は、全て DNSSEC Simulator (http://dnssec.sekiya-lab.info/) のページにてオープンソースとして公開しており、誰でもソフトウェアを入手し、シミュレーションを行うことが可能となっている。また、国内の研究会論文発表や、国際ワークショップでの研究成果発表を行った。現在、全ての成果をまとめた論文を執筆し、論文誌に投稿中である。
|