研究課題/領域番号 |
23500083
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
山崎 克之 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (00432097)
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研究分担者 |
山本 麻希 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (90452086)
山本 寛 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (80451201)
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キーワード | ネットワーク運用技術 |
研究概要 |
昨年度(3年間の初年度)に引き続いて、研究代表者と研究分担者が今までに進めてきた新潟県粟島におけるオオミズナギドリの観測・研究をフィールドとし、センサーネットワーク技術を活用した環境観測情報ネットワークの研究開発を進めている。昨年度は、オオミズナギドリの生態観測として、HF帯のRFIDタグをトリに装着し、巣の入口に設置したRFIDアンテナの読取データをZigBeeのマルチホップ技術を適用したネットワークで収集するシステムを設計した。また、短期間ではあるが、このネットワークを実際に新潟県粟島に構築しデータを取得した。 今年度は、本格的に新潟県粟島にネットワークを構築し、長期間のデータを取得した。また、収集データの解析手法を開発した。特に、RFIDデータはトリがアンテナを通ったことは検出できるが、「内から外」か「外から内」は解らない。トリの生態学的知見も考慮して、RFIDデータから内巣・外巣状態を判定する方法を開発した。これらのデータの解析から、以下の知見が得られた:平成23年度と24年度では、メスの帰巣パターンが異なる。メスは粟島近海で餌を取っているが、24年度は日本海の海面温度が上昇し、餌のカタクチイワシが北上したため、メスが遠くまで餌を取りに行ったためと考えられる。日本海の環境変化がトリの生態にあたえる影響を定量的に把握できたことになる。 また、環境観測ネットワークでは、鳥獣生態学の研究者などICTの専門家以外が容易にネットワークやシステムの設定・運用ができることが求められる。そこで、サーバソフトをJava上に移植し、サーバとしてAndroid端末(具体的にはタブレット)を使うシステムを開発した。運用者はAndroidタブレット上のGUIを用いて、センサーの設定とデータの確認を行う。ICT以外の分野の人たちが積極的にセンサーネットワークを利用することが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境観測のためのセンサーネットワークとしてZigBeeによるマルチホップネットワークを実際に構築し運用した。オオミズナギドリのオス・メス識別としてRFIDタグを利用した観測方式を構築し運用した。設計・開発したRFIDタグリーダとセンサーネットワークを新潟県粟島において長期間設置し、オオミズナギドリの観測を行った。観測データは問題なく取得でき、メスの帰巣パターンの変化などをとらえることができた。以上、第二年度の目的を達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、引き続き新潟県粟島においてオオミズナギドリの観測を行う。特に、雛の成長を観測するため、体重計を巣内に設けてデータを自動取得するシステムを開発し観測を行う。 一方、センサーノードにおけるアクチュエータ技術の確立を図る。環境観測では、センサーによるデータ取得も重要であるが、取得データに基づいて何らかの制御を行うことで、有害鳥獣への対策ができる。そこで出力技術としてアクチュエータへの連携技術を検討する。具体的なフィールドとして、信濃川水系のアユの漁場(簗、と呼ばれる)で問題となっているカワウやサギによる捕食に対して、センサーネットワークによる解決を図る。ここでは超音波センサーによってトリを検出し、検出した場合には音や光による威嚇を試みる。簗場には商用電源がないため、ソーラー発電とバッテリーによる組み合わせで観測できるような方式・システムを開発する。環境観測ネットワークでは、電源が確保できるかどうかという問題が大きい。ZigBeeは基本的に省エネルギーに適した通信方式であるため、これを有効に活用するネットワーク技術を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度と同様、実験実施のための物品、旅費(現地での実験・評価、学会発表、研究打合せ)、を予定する。また、学会発表のための参加費・別刷り代などを予定する。
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