研究課題/領域番号 |
23500087
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高木 由美 神戸大学, システム情報学研究科, 助手 (70314507)
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研究分担者 |
太田 能 神戸大学, システム情報学研究科, 准教授 (10272254)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ITS / 車車間通信 / フラッディング / シャドウイング |
研究概要 |
本年度は、まずシミュレーション評価に用いる商用シミュレータ Scenarige において、車車間通信環境を構築した。また、神戸市三宮地区の地図データから道路情報と建物情報を抽出し、Scneargie で利用できるように環境を整えた。次に、IEEE802.11p によるシングルチャネルでのマルチホップ通信による緊急情報の情報配信特性を評価した。IEEE1609WAVEにおけるマルチチャネル環境にしなかったのは、アプリケーションが利用するチャネル決定方法に関する標準化がなく、我国ではシングルチャネルでの運用が予定されているからである。都市部では、ある車両からその進行方向道路に対して交差点で交わる道路(交差道路)上の車両への通信は、ビル等の建物により見通し外通信となる。すなわち、交差点を回折した際の電波伝播損失は大きく、電波が遠くまで届かないため、交差道路上への通信距離は短くなる(本研究では、これを交差点問題と呼ぶ)。このため、緊急情報や道路情報などを遠くの車両には配信できない可能性がある。そこで、グリッド状道路モデルにおいて、情報配信の一形態であるフラッディング方式の情報配信特性を調査することを目的として、基本フラッディング方式、カウンタ型フラッディング方式、距離型フラッディング方式の3方式をシミュレーションにて比較した。このとき、ある車両で情報の初受信における再送待ち時間RAD(Random Assessment Delay)に、その情報の送信端末までの距離が長いほど短くなるような優先権を与えることで、情報がより遠方に速く配信されるような仕組みを導入した。シミュレーション実験結果から、交差道路上の直接通信できない車両に対しても、情報がグリッド状道路をマルチホップ通信により迂回して配信されることが確認され、都市部でのマルチホップ通信による情報配信の有用性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
車車間通信の研究において、都市部や市街地におけるシャドウィングの影響を考慮した先行研究はほとんどない。今回、ビル等による交差点でのシャドウィングの影響を考慮した電波伝搬モデル(ITU-R P.1411-5)を用いて、面的な配信特性を明らかにした。具体的には、一斉配信にて情報を拡散させる技術(フラッディング)を利用することで、1km以内の通信距離であれば、1秒以内で回り込みによる配信が可能であることを明らかにした意義は大きいといえる。すなわち、緊急情報や道路情報などをフラッディングで配信することの有用性を確認することができたといえる。ただし、情報がマルチホップ通信により迂回して配信されるような経路が存在しないような場合も想定されるため、交差点付近における情報の再送信が行われるような仕組みについて、引き続き検討していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、予定では路車間通信の検討をおこなうことになっている。しかし、実際に路側機を設置するとなると、かなりの費用と時間を要することになる。そこで、今後も路側機つまりインフラを想定しない、車車間通信での研究を進めたいと思う。今回、道路情報や建物情報を含んだ三宮の地図データを購入した。そこで、この地図データを利用し、実際の環境におけるフラッディングによる情報配信特性を評価する予定である。今回の研究でのシミュレーション実験はグリッドシナリオであったため、実際の道路における電波伝搬の影響も確認したい。また、その際には、信号や渋滞などを考慮した移動モデルも考慮の予定である。さらに、IEEE 802.11pもしくはIEEE1609 WAVEシングルチャネルでの優先制御の利用も考慮しながら、交差点問題による見通し外の車両にも情報が届くよう、交差点における効率的な配信方式を検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
車両数が多くなったり、移動モデルを使用すると、シミュレーションにかなりの時間がかかってしまう。そのために、シミュレータのライセンスとシミュレーション用パソコンを計上している。また、電子情報通信学会の研究会および総合大会での発表を予定しており、そのための旅費や参加費、および論文別刷を計上している。
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