ネットワークにおけるルータやスイッチ等機器単体の省電力化はリンクインターフェースの低転送帯域化や通電OFFにより実現され、ネットワークワイドで考慮した場合、任意の送受信ホスト間の経路が複数存在することを前提としたトラヒック量の多寡に応じた経路集約・分散が効果的である。本研究では、省電力化を意識したトラヒックエンジニアリング(TE)について、1)前者を目的とする時間的なTE、2)後者を実現する空間的なTE、および、3)両者を有効に連携する時間・空間的なTEについて具体的な手法とその効果の理論/シミュレーション/実装実験による検証を行った。最終年度の成果は以下の通りである。 1)時間的な省電力TE:送受信ホスト間のトランスポートプロトコルであるTCP(Transmission Control Protocol)では信頼性を提供するために、連続して転送するトラヒック量をネットワークの状況に応じて制御する。これまで、その転送タイミングを遅延させることで経由するネットワーク機器の通電OFF期間を意図的に増加する方式を提案したが、同時に転送トラヒック量も調整するように拡張して通信性能の劣化を抑制しつつ、省電力効果を高める手法を提案した。 2)空間的な省電力TE:これまではネットワーク層のおいて、ルータの接続状況を前提とした転送利用リンク選択方法に着目していたが、その上位のトランスポート層において、任意の送受信ホスト間に設定可能な転送経路を利用状況に応じて選択する手法を検討、さらに、その実装としてマルチパスTCP(MPTCP)の利用可能性について調査した。 3)時間・空間的な省電力TE:ある経路におけるトラヒックの転送待機時間と他経路に迂回するトラヒック量をパラメータとした理論的な性能評価を可能とする解析式を導出した。
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