研究課題/領域番号 |
23500097
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
菅野 正嗣 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (80290386)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | センサネットワーク / ポテンシャルルーティング / 自己組織型制御 / アドホックネットワーク / スマートメータ / 負荷分散 |
研究概要 |
センサネットワークの課題の1つにスケーラビリティの向上があり、これまでに局所的な情報に基づき自己の動作を決定する自己組織型の制御を用いた手法が研究されてきた。しかしながら完全な自己組織制御に基づき動作するネットワークでは、ネットワークの規模が非常に大きくなったときにネットワーク全体が望ましく動作することを保証できないという問題がある。そこで本研究では管理型自己組織制御に基づくポテンシャルルーティングを提案した。管理型自己組織制御では、自己組織的に動作するノードの一部を、集中制御のような方法で管理することで、完全な自己組織制御によって生ずるような、意図しない方向へのシステムの動作の遷移を防ぐ。本研究では、マルチシンクのセンサネットワークを対象として、提案手法をシミュレーションによって性能評価を行った。その結果、シンクノードの分布に偏りがある場合も負荷を均一化できることが示された。さらに、センサノードの中継負荷を分散することで最も負荷の高いセンサノードの消費電力を抑制し、ネットワーク寿命を延長できることを明らかにした。また、大規模なセンサネットワークの適用例として、マンションのような集合住宅に設置されるスマートメータリングシステムを対象とした。これらはノードの配置密度が高いため、隣接ノードが非常に多いトポロジーを形成する。このような状況においてシンクノードからのホップ数のみに基づいたルーティングを行なうと、ホップ数が同じノードであっても、位置によって負荷や伝送能力が大きく異なり、ネットワーク寿命の短縮や性能劣化の要因となる。そこで本研究では、トポロジーに基づいたルーティングと間欠周期の制御により上記の問題を解決する手法を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数のシンクノードを持つマルチシンク構成をとるセンサネットワークにおけるポテンシャルルーティングを実現するための基本的な方法を提案し、数学的なモデルによる方式の妥当性を検討した。さらに、提案方式を導入した場合に、完全な自己組織的な制御ではなく、シンクノードのポテンシャル値を外部から制御する管理型自己組織制御を適用することで、ネットワーク寿命などの性能を高める効果があることを明らかにすることができた。また、このような大規模なセンサネットワークの適用例の一つであるスマートメータリングシステムを対象として、高密度に配置されることに起因する問題点を明らかにし、それを解決するための手法を提案することができた。これらの研究成果に関しては、国内の研究会等において成果発表を行い、多くの研究者との議論を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本提案方式において最も重要な要素であるセンサノードが持つポテンシャル値を決定する際に、隣接ノードのポテンシャル値だけではなく、自己の残余電力や隣接ノード数、またある時点での負荷の状況などの様々な要因を考慮することによって、より効率が高く、ロバストな制御が行える可能性がある。また、シンクノードに到達したデータの状況をモニタリングすることによってネットワークの内部状態を推測し、それに基づいてシンクノードのポテンシャル値を適切な値に制御するためのフィードバック手法について検討を行う。また、単にシンクノードに対してデータを収集するだけではなく、ネットワーク内の特定のノードに対して、クエリや制御情報を送信するような、下り方向のルーティングに関して、ポテンシャル値を活用した方法について、その実現手法を検討していく。さらに、単にコンピュータ上でのシミュレーションや解析的な手法による性能評価だけではなく、適用場面として有力と考えられるスマートメータリングシステムのような具体的な対象モデルを考え、それらにおける特有の課題抽出を行い、それぞれのモデルに適した管理型自己組織制御手法を考えていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度に得られた研究成果に関しては、国際的な学術論文誌や国際会議で成果発表を行うことによりその成果を公表する。そのための論文投稿料や、国際会議に参加するための参加費や旅費が必要となる。また、提案方式に関する実環境での性能評価を行うために、実機による動作確認、あるいは現在各地で実験が行われているスマートシティなどのフィールドに設置されている機器に適用することによって、有用性の検証や大規模なセンサネットワークにおける問題抽出をさらに行っていく。そのために、機器開発メーカとの打ち合わせや、フィールドでの実験に必要となる機器や、移動のための旅費を必要とする。
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