研究課題/領域番号 |
23500097
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
菅野 正嗣 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (80290386)
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キーワード | センサネットワーク / アドホックネットワーク / スマートメータ / ポテンシャルルーティング / 負荷分散 / 消費電力 |
研究概要 |
昨年度提案した、管理型自己組織制御に基づくポテンシャルルーティングをセンサネットワークに適用することで、複数のシンクノードのポテンシャルを制御することで、負荷分散やネットワークの長寿命化が実現できることを明らかにした。 このように複数のシンクノードがある場合、センサノードがそれぞれのシンクごとのポテンシャル場を形成することができる。3つ以上のポテンシャル場を組み合わせることにより、シンクからセンサノードに対する下り方向のルーティングが可能となる。本研究では、受診端末駆動型の無線マルチホップネットワークプロトコルであるIRDTに基づいたセンサネットワークを対象として、シンクノードから特定の位置に存在するセンサーノードに対してクエリや特別な命令を送るための方式を提案し、シミュレーションによる評価を行った。その結果、パケット損失率が0.1以下の条件下で、データの到達率が99.5%以上であること、さらに、提案手法がノード故障に対してロバストであることを示した。 一方、電力会社においては、各家庭に設置したメータを用いた電力のモニタリングや、送電制御等を行なうためのスマートメータリングシステムの需要が高まっている。現時点で想定されている仕様としては、センター局あたり500台以上のメータを収容し、30分ごとの計測値を短時間で収集できることや、センター局からメータに対しての逆方向の通信の必要性が挙げられている。このような大規模な無線マルチホップネットワークを実現するためには、本研究で提案したポテンシャルに基づくルーティングが適していると考えられる。そこで、本研究では、大規模なスマートメータリングシステムに提案手法を適用した場合の性能評価をシミュレーションによって行なった。その結果、メータ数が1600台程度であれば、10分間で98%以上のデータ収集率を実現できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
センサネットワークにおけるポテンシャル場に基づいたルーティングに関して、複数のシンクからなるマルチシンク構成をとった場合に、シンクノードのポテンシャルを制御することで、ネットワーク全体のポテンシャル場を適切に制御することを明らかにしただけではなく、ポテンシャル場を組み合わせることによって、センサからシンク方向の通信とは逆の、シンクから特定のセンサに対する逆方向の通信が可能であることを示すことができた。 さらに、この特性を、大規模なスマートメータリングシステムに適用することを考え、1000台以上のメータから構成されるスマートメータリングシステムのデータ収集方式として、受診端末駆動型のIRDTプロトコルと、ポテンシャル場に基づいたルーティングが適用できることを示した。 現在までの研究成果については、査読付き学術論文誌3本(うち2本は出版済み)および、3件の国際学会での発表、2件の国内学会発表によって成果発表を行なうとともに、多くの研究者との議論を行なうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、ポテンシャルルーティングを、再規模なスマートメータリングシステムに適用することを考え、1000台以上の多数のメータからなるシミュレーションを行なうことで基本的な性能評価を行ない、性能を向上させるための方式提案を行なった。しかしながら、現在のシミュレーションモデルは、メータの配置が正則であったり、無線回線の通信品質の変動が起こらないなど、理想的な環境に基づいたものであり現実の通信環境を反映しているとは考えにくい。実際に、小規模のスマートメータを設置した実証実験で得られたデータでは、メータ間の通信可能距離が等方性を持たず、方向によってかなり変動があることが明らかとなった。これは、建物とメータとの配置関係や、道路などの障害物がない空間の有無によるものである。 スマートメータに限らず、センサネットワークなどの無線マルチホップネットワークに関する多くの研究では、方向による通信距離の変動を考慮したものは少ない。そこで、提案方式に関して、より現実的な性能評価を行なうために、方向によって通信距離が大きく変動するようなモデルを考え、ポテンシャル場がどのような影響を受けるか、またスマートメータを設置する際にどれだけの性能が得られるか、さらに方向によるばらつきが存在する場合に適した通信方式の検討を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度に得られた研究成果に関しては、引き続き国際的な学術論文誌や国際会議での成果発表を行なうため、論文投稿料や、国際会議に参加するための参加費や旅費が必要となる。 また、より実使用環境に近い条件での性能評価を行うために、実際に無線機を使った実験を行なうことで、パケット収集率や遅延などの測定を行なったり、スマートメータを開発している機器メーカとの打ち合わせや、実験に参加するための旅費が必要となる。
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