研究課題/領域番号 |
23500105
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
巳波 弘佳 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (40351738)
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研究分担者 |
藤原 明広 関西学院大学, 理工学研究科, 博士研究員 (70448687)
内田 真人 九州工業大学, ネットワークデザインリサーチセンター, 准教授 (20419617)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 劣通信環境 / DTN / 最適化 / アルゴリズム |
研究概要 |
大規模災害時における情報流通手段の確保や,その発生予知・状況監視のための大量のセンサによる自然環境情報収集など,広帯域・低遅延の通信ネットワークの存在を前提とできない劣通信環境下における情報通信技術DTN (Delay- and Disruption-Tolerant Networking) の必要性が高まっている.本研究では,DTNにおける有効な情報転送技術の確立を目指して,「ノードの移動特性に関する情報を利用した蓄積搬送型中継転送方式の設計」および「蓄積搬送型中継転送方式に基づく情報収集・共有方式の設計」を行うことを目的として研究を行っている.ノードの移動特性に関する情報を利用した蓄積搬送型中継転送方式の設計のために,まずモビリティモデルを検討した.実際の人間の移動パターンについて,GPS付スマートフォンを利用して観測し,新たな性質としてすれ違い頻度分布のスケールフリー性を見出した.また,それを説明できる,Homesick Levy Walkという新たなモビリティモデルを設計した.さらに,ノード間の出会いやすさの偏りを反映した特性量を推定し,最適停止問題として定式化することにより,理論的に性能が保証された転送アルゴリズムを設計した.このアルゴリズムはHomesick Levy Walkにおいて良い性能を達成し,現実的な状況においても有効であることがわかった.さらに,蓄積搬送型通信の効率化方式として知られるVirtual Segment方式の現実的な状況における性能を評価するために,2011年に発生した東日本大震災直後の道路ネットワークトポロジを用いたシミュレーションを行った.その結果,情報の高い到達率と小さい遅延時間を実現できることがわかった.これは,今後起こりうる災害時における情報流通手段の一つになりうることを示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
モビリティモデルとして,観測結果と高い整合性のあるモデルを設計できたこと,さらに蓄積搬送型通信における転送アルゴリズムとして理論的に性能保証できるものを設計できたことが理由である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに検討したアルゴリズムは,移動特性の学習が必要であった.移動のランダム性が高いほど学習に時間を要する.しかし,これまでの観測から,実際の人間の移動のランダム性は小さいことが推察できている.そのため,移動特性の推定の高速化の可能性が期待できる.今後は,この移動特性推定の高速化アルゴリズムと組み合わせることによって,さらに効率的な中継転送アルゴリズムの設計を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
移動特性推定の高速化のために,実際の人間などの移動特性情報のさらなる収集が必要である.したがってGPSやスマートフォンを用いた現在の観測環境の拡大が必要である.また,モビリティモデルの検証のために行う確率的なシミュレーションも必要となる.そのため,モバイル通信端末やシミュレーション用PCを購入のために研究費を使用する.また,成果発表や情報収集のための旅費としても使用する.なお,繰り越しが発生した理由は,当初予定していた実験に用いる機器に関して,実験をよりスムースに行える仕様の機器の販売が翌年度に計画されたことを受け,実験計画を変更したからである.
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