研究課題/領域番号 |
23500105
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
巳波 弘佳 関西学院大学, 理工学部, 教授 (40351738)
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研究分担者 |
藤原 明広 関西学院大学, 理工学研究科, 博士研究員 (70448687)
内田 真人 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (20419617)
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キーワード | 劣通信環境 / DTN / 最適化 / アルゴリズム |
研究概要 |
大規模災害時における情報流通手段の確保や,その発生予知・状況監視のための大量のセンサによる自然環境情報収集など,広帯域・低遅延の通信ネットワークの存在を前提とできない劣通信環境下における情報通信技術DTN (Delay- and Disruption-Tolerant Networ king) の必要性が高まっている.本研究では,DTNにおける有効な情報転送技術の確立を目指して,「ノードの移動特性に関する情報を利用した蓄積搬送型中継転送方式の設計」および「蓄積搬送型中継転送方式に基づく情報収集・共有方式の設計」を行うことを目的 として研究を行っている. 携帯端末を利用した災害時の避難誘導システムを想定し,蓄積搬送型中継転送に基づいて情報を共有しながら個々のノードが自律分散的に地図を推定し,それに基づいて適切な避難経路を決定する方式を検討した.また,避難時間を短縮する避難誘導アルゴリズムを設計し,その有効性を評価した.その結果,提案アルゴリズムの有効性が示され,さらに通行不能箇所の情報共有が避難時間の短縮に大きく影響することがわかった. さらに,蓄積搬送型通信の効率化方式として知られるVirtual Segment方式の現実的な状況における性能を評価するために,2011年に発生した東日本大震災直後の東北地方や,その他の様々な地域の道路ネットワークトポロジを用いて様々なシミュレーションを行った.その結果,Virtual Segment方式が災害時に有効な情報流通手段となりうることが示された.さらに,Virtual Segment方式におけるコアネットワークのゲートウェイの配置場所が性能に大きな影響を与えることがわかった.これは,ゲートウェイの最適配置問題の必要性を示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
携帯端末を利用した災害時の避難誘導システムとして有用な,蓄積搬送型中継転送に基づいて情報を共有しながら個々のノードが自律分散的に地図を推定し,それに基づいて適切な避難経路を決定する方式を設計できたこと,また,現実的な状況を想定したシミュレーションにより,実現可能性を示せたことが理由である.
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今後の研究の推進方策 |
災害時の避難誘導システムの実現を想定し,これまでに検討したアルゴリズム群をブラッシュアップする.避難誘導時には避難経路が集約されるため,情報共有が効率的に行われると期待でき,効率的な中継転送アルゴリズムの設計が期待できる.
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次年度の研究費の使用計画 |
災害時の避難誘導システムの性能評価のためには,現実的な状況を想定した大規模なシミュレーションが必要である.そのためのシミュレーション用PCが必要である.また,避難誘導システム以外の一般的な状況における移動特性推定の高速化のために,実際の人間などの移動特性情報のさらなる収集が必要である.そのため,GPSやスマートフォンを用いた現在の観測環境の拡大も必要である.このような,モバイル通信端末やシミュレーション用PCを購入のために研究費を使用する.また,成果発表や情報収集のための旅費としても使用する.
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