研究課題/領域番号 |
23500109
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
古川 宏 筑波大学, システム情報系, 准教授 (90311597)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 歩行者ナビ / 高度道路交通システム / 移動体通信 / 認知科学 / 不安 / 避難誘導 / GIS |
研究概要 |
本研究の目的は、利用者の迷いや不安を軽減する"安心歩行者ナビ"の実現に向け、ランドマークの利用しやすさを定量的に評価するモデルによる経路探索手法の有効性検証と確立、実用化に向けた仕様策定である。本年度は、現在地特定タスクに要する認知的負荷の定量的評価機構の実用向けの拡張(A)と、この機構を組み込んだ歩行者ナビ模擬システムの実装(B)を行った。また、歩行者ナビ模擬システムを用いたノード評価機構の予備的評価とパラメータ調整(C)については、計画を繰り上げて開始した。 A)経由ノードに対する認知的負荷評価機構の拡張:ランドマークの認知容易性および視認可能性を推定する実用的な評価モデルを求めるため、条件を網羅的に変化させた経路探索シミュレーションによる被験者実験を実施し、構築済みの基本モデルの拡張を行った。また、本経費で導入したNAVIシステム内の地理データと、現地調査の結果から、より詳細な条件を変数とした視認可能性推定関数を導出した。以上で得られた各評価関数より、各交差点において実際に利用者が感じる"位置特定のしやすさ"を定量的に推定するモデルの基礎構築を実施した。 B)実地実験に用いる歩行者ナビ模擬システムの構築:提案手法の実証評価と実用化のため、携帯端末を利用した模擬システム環境の構築を開始した。システムの3部のうち、歩行者ナビ用サーバ、ユーザが使用する携帯端末の構築をほぼ完了した。 C)歩行者ナビ模擬システムを用いたノード評価機構の予備的評価とパラメータ調整:B)により実際に利用者が歩行者ナビサービスを体験する環境が整ったことから、計画を繰り上げ、被験者実験を開始した。これにより、A)で導出した認知容易性および視認可能性の各モデルの妥当性を確認するとともに、"位置特定のしやすさ"を定量的に推定するモデルの改善と見つけやすさをコストに加味する方法の検討に着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度実施予定であった「A)経由ノードに対する認知的負荷評価機構の拡張」および「B)実地実験に用いる歩行者ナビ模擬システムの構築」について:前者(A)は予定通り完了し、ランドマークの認知容易性および視認可能性を推定する実用的な評価モデルの導出、交差点において実際に利用者が感じる"位置特定のしやすさ"を定量的に推定するモデルの基礎構築を実施した。後者(B)は平成24年度の完了を目指しているが、システムの3部のうち"歩行者ナビ用サーバ"と"ユーザが使用する携帯端末"の構築をほぼ完了することで、実際に利用者が歩行者ナビサービスを体験する環境を利用可能としている。 次年度(平成24年度)に実施予定であった「C)歩行者ナビ模擬システムを用いたノード評価機構の予備的評価とパラメータ調整」であるが、B)により環境が整っていることから、計画を繰り上げて着手した。既に提案手法に基づくサービスを用いた被験者実験を開始しており、これにより、導出モデルの妥当性評価や改善・拡張に取り組んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
【平成24年度】B)実地実験に用いる歩行者ナビ模擬システムの構築:前年度より継続して実施する。システムの3部のうち、歩行者ナビ用サーバ、ユーザ携帯端末の構築をほぼ完了している。これらの完成と、GISシステムに基づくノードの認知的負荷評価処理システムの構築を実施する。C)歩行者ナビ模擬システムを用いたノード評価機構の予備的評価とパラメータ調整:前年度より継続して実施する。実際に利用者が歩行者ナビサービスを体験する環境を用いることで被験者実験を実施し、モデルによる推定結果を評価する。これより、見つけやすさをコストに加味する方法や見つけやすさの重み付け係数等を調整することで、経由する地点にどのような違いが生じるか確認し、ナビゲーション利用者にとって不安の少ない経路の探索に最適な方法・パラメータを検討する。【平成25年度】D)実証的実験による評価機構の妥当性・有効性の評価:提案法を導入した歩行者ナビサービスを多様な被験者に利用してもらい、"評価機構にて考慮した各条件変数"と"ユーザの不安"の間の因果関係を定量的に解析し、評価機構の妥当性・有効性を評価する。多様な利用者を対象とした評価とするため、青年層に加え高齢者被験者をも採用する。E)実用化システムに必要となる基本仕様の策定:実用システムが備えるべき技術的要件と、解決すべき技術課題の確認、基本となるシステム仕様の策定を行う。【両年度】"安心歩行者ナビ"の実現に向けた知見として、ランドマークの利用しやすさを定量的に評価可能とする提案モデルと、これを利用した経路探索手法の有効性・有用性、実用システムが備えるべき要件などについて得られた結果を取りまとめ、国内外の学会やジャーナルにて成果の発表を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
(1)「B)実地実験に用いる歩行者ナビ模擬システムの構築」の実施: 昨年度に引き続き、ノードの認知的負荷評価処理システムおよび歩行者ナビ用サーバを構築する際に、ゼンリン社製の"NAVI開発キットCGI"を地図情報取得のためのサーバインタフェースとして使用する。"ライセンス費"は初年度(平成23年度)のみの費用であり、本年度はデータベース使用料である"運用費"のみとなる。(2)「C)歩行者ナビ模擬システムを用いたノード評価機構の予備的評価とパラメータ調整」の実施:提案する手法の実証的評価と改良を目的として、構築した歩行者ナビ模擬システムによる被験者実験を実施することを計画している。このとき、実用化に向け多様なユーザを想定することが必要なため、多数の被験者に対する謝金の支払いを想定している。(3)成果公表の費用:成果の国内外に向けた公表のために、国内・国外の学会・シンポジウム等における成果発表の旅費および参加費、さらに学術雑誌への投稿料の支払いを計画している。既に"ヒューマンファクタと人間工学の応用に関する国際会議"(7月, 米国)に論文が採択されている。また、国内学会の論文誌へ論文を投稿中である。 なお、計画に沿って平成23年度末に執行したライセンス費、携帯電話使用料、旅費、学会参加費については、平成24年度に会計処理されるため繰越となった。
|