本研究の目的は、利用者の迷いや不安を軽減する“安心歩行者ナビ”の実現に向け、ランドマークの利用しやすさを定量的に評価するモデルに基づく経路探索手法の有効性検証と確立、実用化に向けた仕様策定である。 前年度までに、次を実施した。経由ノードに対する認知的負荷評価機構の拡張:条件を網羅的に変化させた経路探索シミュレーションによる被験者実験を通し、基礎モデルからの拡張を行った。実地実験に用いる歩行者ナビ模擬システムの構築:歩行者ナビ用サーバ、ユーザが使用する携帯端末、GISに基づき各ノードの認知的負荷評価を行う処理系を構築し、実証的評価を実施するための実験環境を整備した。歩行者ナビ模擬システムを用いたノード評価機構の予備的評価とパラメータ調整:構築したシステムを用いることで、実際に利用者がサービスを体験する実験を行い、“位置特定のしやすさ”を推定するモデルの問題点の確認と改良、推定値をコストに加味する方法(コスト関数)の検討を行った。 本年度は、評価機構の妥当性・有効性の評価を目的とし、歩行者ナビ模擬システムを用いた実証的実験を実施した。短距離・長距離、都市部・非都市部、住宅地・商店街など条件が異なる地域を対象とし、ユーザの多様性を考慮して、特に高齢被験者による実験から、タスクの実行時間、不安の主観的評価などのデータを取得した。これら測定データに基づき、各条件に対する評価モデルの予測精度の評価を行った結果、モデルは高い精度を有すること、評価機構として妥当かつ有効であることが確認された。また、精度向上への対応として、特異な形状の交差点・道路をユーザの利用情報として推定モデルに組み込むこと、空間認知能力における個人差を考慮することが重要であることも明らかとなった。 今後は、実用システムの構築を目指し、ユーザとの適切なインタラクションを考慮したシステム設計を実施する予定である。
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