モバイル機器(可搬端末)とインフラ設置機器(固定端末)が協調動作するMICO(Mobile/Infrastructure Collaborative Operation)指向の歩行者ナビゲーション環境の実現に向けて、本年度は、MICO指向の歩行者ナビゲーションシステム(以降、ナビシステム)の機能の一つである固定端末で示された案内文を可搬端末で持ち運ぶ効果の検証を行った。その結果、案内文を持ち運ぶことが固定端末上の案内文の読み取り時間の削減に効果的であることを確認した。また、システム構築に必要な知見として、固定端末では前年度求めた適切な文字数の案内文を提示し、可搬端末では、案内する目的地までの経路の複雑度(距離、曲がる回数、性別から算出)に応じて、固定端末と同じかまたはより詳しい案内文を持ち運ぶことの有効性を明らかにした。 これまで得られた知見に基づき、埼玉大学構内の案内を行うMICO指向のナビシステムを構築した。開発した固定端末でユーザが目的地を入力すると、画面上に案内情報とQRコードが表示され、このQRコードをユーザが所有する可搬端末のリーダで読み取ることで、案内情報が可搬となる。また、QRコードの利用は可搬端末の種類や機種への非依存を意味する。さらに、地図と案内文を利用した固定端末による歩行者ナビゲーションシステムのHMI(Human-Machine Interface)の検討、可搬機器と三種のマーカを用いたナビシステムにおけるマーカ種自動識別手法を含めた統合システムの開発を行った。これらの知見に基づく更なる論文の執筆を進めている。 以上、本研究課題では、MICO指向のナビシステムの設計・実装、可搬機器とマーカを用いたナビシステムの統合、固定端末のHMIの評価、可搬端末で案内文を持ち運ぶ効果の検証を通じ、MICO指向のナビシステムの基本設計手法の知見を得た。
|