近年、バーチャルリアリティ(VR)技術において、仮想物体を手で触ったときの感触や手に感じる力、すなわち、触覚や力覚についての研究が、国内外において、盛んに研究されてきている。触覚や力覚の提示は、ユーザとVR空間内の仮想物体とのインタラクションに非常に有効であり、仮想物体の認識や操作性の向上に大きく貢献する技術として注目されている。申請者らはこれまで、力覚に関して、開発者(クリエータ)側に対して意義あるVR開発環境を提案してきたが、本研究では、開発者側に対する提案と同時に、利用者側に対しても、従来以上に質の高いコンテンツを提供すべく、爆発的に普及しているWEBページコンテンツとして力覚情報を組み込み、「力を感じるWEBシステム」を構築する。 本研究では、特に、ユーザが手で触る対象物となる3次元仮想物体の表現については重点的に研究開発を行った。仮想世界において3次元仮想物体は主にポリゴンで表現されるが、ポリゴン数が多くなると処理時間も増加するため、実時間処理を必要とする力覚インタラクションの適用が困難となる。これまでの研究では、物体表面の凹凸をテクスチャで表現することで、物体を構成するポリゴン数を減らして処理時間の増加を抑えている。しかし、従来法では物体がポリゴンの2箇所以上を同時に触れた場合に対応できないため、テクスチャで表現した凹凸と任意形状の物体とのインタラクションが困難である。そこで、1画素の情報から新たなポリゴンを生成して力を計算している従来法に対し、複数の画素それぞれに格納した情報を統合する複数画素参照法を提案した。 なお、本研究の最終目標である力を感じるWEBシステムの基礎となるシステム構築に関しても、既存のブラウザの拡張を行うなどの方法で、おおむね開発することができた。
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