空間索引については,階層的つまり木構造を基本とし,その代表であるR-Treeを基本として研究を行った.R-Tree以外で最も効果的であるといわれているものにM-Treeが知られている.R-Treeを基本とし,一部にM-Treeの技法を取り入れたMR-Treeを考案し,その有効性を確認した.MR-Treeは,とくに,次元の呪いを緩和するための次元縮小法として,Simple-Mapと組み合わせることで高性能を発揮する.Simple-Mapは,本研究の先行研究で考案されたもので,任意の距離空間に適用可能であるという特徴をもち,L∞距離空間に射影する. 空間索引を高速化する技法としては,三つの質問処理方法を考案した.データベース内の近接データ間の距離情報を用いる方法と連続する質問間の類似性を用いる方法,複数の質問処理を一括して行う方法である.これらを実際の画像データと音データに対してそれらの有効性を確認した.第1の手法は,データベース内のデータが質問と類似していないことが判明すると別の類似のデータも質問とは類似していない可能性が高いという事実を利用するものである.第2のものは,逆に,ある質問に類似のデータがデータベース内に見つからない場合には,連続する類似の質問に対しても同様に解が見つからない可能性が高いという事実を利用したものである.第3のものは,複数の質問を一括して処理することでハードディスクなどの2次記憶のアクセスコストを低減するものである. 次元縮小法Simple-Mapについては,射影軸を求める解析的手法が知られておらず,発見的手法を用いている.従来の手法では,データベース内オブジェクトをそのまま候補として用いているが,それらを空間内の最大値あるいは最小値になるように離散化して用いることにより高性能な射影を見つけることができることが分かった.
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