研究課題/領域番号 |
23500131
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
芦野 俊宏 東洋大学, 国際地域学部, 教授 (40302583)
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研究分担者 |
岩田 修一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (50124665)
山下 雄一郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 研究員 (60462834)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 材料データベース / 標準化 / データスキーマ / オントロジー |
研究概要 |
材料オントロジーの国際標準作成の推進のため、2月のEU標準規格委員会(CEN)におけるワークショップSERES(Standards for Electronic Reporting in the Engineering Sector)のキックオフミーティングに出席し、同ワークショップのビジネスプランなどについて議論するとともに、ローマのENEAを訪問しVAMAS TWA35, ISO6982, ISO10303等に関連して材料に関するデータ表現の標準化についての研究交流を行った。 材料オントロジーにおける数式データ表現の為のフォーマットを検討するために、産総研分散型熱物性データベースに収録された数式データ(ファクトデータ)約300件を抽出し、変数定義と合わせて数式の意味記述を行った。結果として、分散型熱物性データベースに収録された大部分の式データはOpenMath形式で記述できることが確認された。 さらに比熱容量、エンタルピーに関する熱力学データ推奨値について、Haas-Fisher式によるフィッティングを実施し、推奨値を物理的に矛盾がなくかつ精度よく再現する方法を考案した。その際、精度よくフィッティングするためには、多区間化することが必要であることが確認されたため、材料・物性分野に於ける数式データ表現では、式定義域や多区間に分割された式の表現方法を考慮する必要があるといった、新たな課題を見出した。 また、データと社会との関係について論述した基調講演や論文投稿を行った。このような作業を通して学問の再構築のための基本的な考え方をまとめ、観測科学、実験科学、理論科学、計算科学の成果を戦略的に関係付けるための科学としてデータ科学と設計科学の学術的位置付けを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際的な標準化の活動については、EUにおける経済的理由などによりCENのWS-SERES開始が遅れ、キックオフが2月となったためにこの方面での活動は予定より遅れている。また、VAMAS TWA35は予算が確保されていないこともあって活動は遅滞している。材料データの標準化に関してはこの他、製造業における電子的データ交換を考えるISO TC184,材料の機械試験を考えるISO TC164などが活動しているが、グループによって方向性が若干ずれている。このためCODATAのタスクグループなどによって全体の調整を行いたいと考えているが、難航している。EUに関しては関係者がCENで議論しているが、アメリカは参加しておらず、また、アジア圏では中国、韓国、インドなどが個別に材料データベース構築を進めており、統一した議論がない。 材料オントロジーの拡張に関しては、本年度、OpenMathがオントロジー記述との相性もよく、XMLによって記述された他のデータ構造などとの連携も可能と考えられたため、産総研の熱物性データベースに収録された数式データベースに含まれる300件についてOpenMathによる記述を作成した。未だ物性パラメータの適用可能範囲の記述などが未実装であるが、この点については当初の予定を越えて進捗している。 したがって、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
CENワークショップSERESは24年度内に二回のミーティングを予定しており、これらに実際に、またはオンラインにて出席予定である。SERESでは、ISO6892(TC164)に規定された機械試験の試験データをISO10303(TC184)のデータ構造の拡張として定義することを考えており、これらのグループと連携を進める。また、4月に開催されるAMDS2012 (3rd Asian Materials Database Symposium) において本研究における材料データベースでの数学的知識の管理について研究発表を行うとともに、アジア圏での熱物性データに関連した研究交流の打ち合わせに加わる予定である。10月に開催されるCODATA国際会議においては材料データのタスクグループ関係者と打ち合わせを行う予定である。 材料オントロジーの拡張に関しては、材料分野の経験式や物性値の評価式など数式として表される知識のOpenMathコンテンツ・ディクショナリを用いた表現について、より詳細化を行うとともに、数式に含まれる概念とOWLによる材料オントロジー記述との関連づけなどを進める。また、OpenMathのインターフェイスを用い、材料データベースに格納された数値データに対して、数式処理システムによって経験式のフィッティングパラメータのアセスメントを行うなど、応用についても検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は国際化に関連して、4月のAMDS 2012(那覇)に加え、CODATA国際会議(台北)、CENワークショップミーティング(パリ)、熱物性国際会議など国内外の学会・ワークショップなどに出席し、材料オントロジーの開発、材料データの交換フォーマットについて国際的な合意を得るため、国内外の研究者との研究交流、標準化へ向けての議論を進めるための出張旅費を中心に支出する。 また、オントロジー拡張に関連して産総研のデータベースに収録されている数式データの整理、NEDO知的基盤受託研究において開発した材料オントロジーに記述された項目と数式データに関連する概念記述に必要とされている項目の対応付けを行うための謝金および消耗品を支出する。23年度は震災やCEN WSの立ち上がりの遅れなどのため、繰越額が多くなったが、24年度は繰越額を含めて支出する予定。
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