研究課題/領域番号 |
23500131
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
芦野 俊宏 東洋大学, 国際地域学部, 教授 (40302583)
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研究分担者 |
岩田 修一 事業構想大学院大学, 事業構想研究科, 教授 (50124665)
山下 雄一郎 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 研究員 (60462834)
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キーワード | 材料データベース / ドメイン・オントロジー / Linked Open Data |
研究概要 |
本研究の目的の一つである物性値の関係式の表現について、昨年度OpenMathを用いた表記を検討し、産総研熱物性データベースに収録されている多項式表現のデータベース化を行った。本年度はH23年度に明らかとなった式定義域や多区間に分割された式の表現方法について引き続き検討を続ける一方で、産総研分散型熱物性データベースにおいてH23年度に開発した式データ約90件について、OpenMathフォーマットでの式辞書と係数の書き出しを実施した。書き出した式辞書ファイルと係数データファイルは分散型熱物性データベースに収録した。これらの結果は国際会議、査読論文などとして公開した。 また、材料オントロジーの国際的な標準化へ向けての取り組みについては、昨年度2月より開始された欧州標準規格委員会によるワークショップに引き続き参加した。本ワークショップは、材料に関する試験結果のデータの表現を標準化することで、製造過程における材料特性のデータの電子的な交換を可能とすることを目的としており、このために二年計画で単位系や材料物性などについてオントロジー記述を行い、技術検証を行うことになっている。24年度に開催されたプレナリー・ミーティングに参加した。従来はISO6892のアペンディクスを目指していたが、賛同が得られなかったため、ISO10303での標準化を目指すこととなった。 この他、24年度より、産総研の熱物性データベースをLinked Open Data (LOD)に接続してデータ活用を図ろうという動きが始まったが、LODではSemantic Webの技術を用いてインターネット上でデータをその意味内容が分かる形でリンクするため、オントロジーなどを用いた辞書を作り、これを公開する必要がある。これは、本研究の目的とするところと同様の方向であり、産総研のグループと議論を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
材料オントロジーとリンクした形での数式表現に関しては順調に進捗しており、産総研熱物性データベースで実際に管理されている数式データベースに関して適用することで問題点が明らかになりつつある。 オントロジーの国際化については、CODATA Task Group for Exchangeable Materials Data Representation の活動が停滞して進んでいないが、国内でのオープンデータ活用への動きに伴って、産総研熱物性データベースをLODへリンクして公開する動きが始まり、このためには国際的にも共通の辞書を用いたデータの記述が必須であることから、こちらとの議論を進めた。また、CEN WSにおいても、対象とするISOを変更するなど、国際化においては必ずしも順調に進捗していないのが現状であるが、標準化は交渉を要することであるためある程度は致し方ないものと考えている。なお、開発した材料オントロジーは公開しているが、エンジニアリングに関するオントロジーを開発している海外の大学などから昨年度、一昨年度で数件の問い合わせを受け、ダウンロードされており、エンジニアリング分野においてもデータ共有、オントロジーの開発が進められるにつれ、その基盤として認知されつつあるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
数式の表現については、24年度に検討を加えた結果を元に熱物性データベース収録の数式の表記を開発する。25年度は、これに加えて、LOD、材料オントロジーなどのSemantic Web技術を用いたデータ表現、および数式処理システムなどの外部ソフトウェアとの連携を中心に検討を加える。 オントロジーの国際化については、LODにおける材料データの表記に関する基盤の構築に注力する。現状、LODにおける科学技術データの中心は地理情報、ライフサイエンスに関する情報であり、物性値に関する基盤、例えば単位系、単位の次元など広く標準的に用いられている表記が存在しないため、この分野に焦点を当てて開発と普及を継続する。CEN の Workshop に関しては、材料データの電子化について材料のユーザ企業のニーズが存在することは明らかであり、今後共機械試に関するデータ表現の標準化とオントロジー記述、ISOへの採用に向けて活動を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度研究費は、国際的なグループにおけるオントロジーに関する議論のための海外出張旅費と辞書整備のためのアルバイト経費を中心とする。CEN WS/SERESが25年度中に最終報告書を取りまとめることになるため、最終のプレナリー・ミーティング出席のための欧州出張に25万円程度を予定している。また、OpenMathを用いた数式のデータベースのためのデータ入力などのアルバイトとして60日x1人程度の人件費支出を予定している。 平成24年度の予算執行は年度予算をやや超える額であったが、平成23年度震災などの影響による研究の遅れによって平成23年度から予定を上回る繰越金が発生したため、平成25年度への繰越金が10万円強発生した。これについては、平成25年度中に学会発表のための旅費などで執行する予定である。
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