研究課題/領域番号 |
23500146
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
田中 明 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (10323057)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 立体映像 / 自律神経解析 / 末梢血管抵抗 |
研究概要 |
23年度は1)血管調節パラメータの妥当性の調査,2) 映像視聴実験,3)映像視聴時の各指標の変化の調査を目的とした.血管調節パラメータの妥当性の調査では,電気回路モデルをベースとして,伝達関数をARXモデルで表現し,その中のAR項を血管調節パラメータとして定義づけた.本パラメータの基本特性を確認するために交感神経活動の検査の一つである寒冷昇圧試験を行った際の本指標を求めたところ,寒冷刺激により優位に上昇し,本指標が交感神経活動の指標として有用であることが示唆された.また,本指標は静脈の圧迫時にも上昇する傾向を示したことから生体の血管抵抗の変化を反映している可能性が示唆された.本指標は最低で1拍分のデータから算出可能であり,血管弾性の物理的特徴量に起因することから個人差も比較的少ない可能性がある.一方,各波形が正しく計測出来ていない場合は指標の信頼度が低くなるため,信頼性の評価も同時に行う必要があることも明らかとなった.映像視聴実験および視聴時の各指標の調査では,立体映像中に加工を加えて違和感のあるシーンを含む映像を視聴した際の生理指標の違いについて調査を行った.その結果,違和感のある映像による生体へ影響は,心拍数や血圧では優位な変化は現れなかったが,血管調節パラメータではいくつかのシーンにおいて優位な変化が確認できた.従来の自律神経指標では,時間分解能の粗さから,わずかに含まれるシーンの影響を捉えることは困難であった.一方で,映像要素の種類,程度や時間などの影響の基本的な特性を調べる必要があることも明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は1)血管調節パラメータの妥当性の調査,2) 映像視聴実験,3)映像視聴時の各指標の変化の調査を目的とした.血管調節パラメータの妥当性の評価では,寒冷昇圧試験および上腕圧迫に対してモデルから予想される結果を得ることができた.しかし,計測の安定性や同定誤差が大きい時の対処について再検討する必要性についても明らかとなった.映像視聴実験では,立体映像に対して加工を施して映像を利用して自律神経指標の変化を調査した.実験結果から血管調節パラメータの有効性については確認できたが,使用した映像では,生体に影響を与えた要素を明確にすることは困難であった.上記の通り,本年度はおおむね研究計画通りに実行できたと考えられるが,一方で新たな課題も明らかとなったため,次年度以降の研究に盛り込む必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
23年度において,計測が不安定な場合における指標の信頼性の低下への対策および実験映像としてより生体に影響を与える要素が明確なものも必要性が明らかとなったため,当初の研究計画に加えて上記の内容を行う必要がある.したがって,次年度には,1)血管調節パラメータ算出方法の改善,2)基本的な映像要素で構成された立体映像視聴時の生体影響調査,3)映像の主観による評価を主に行う.1)の血管調節パラメータ算出方法の改善では,システム同定に用いる信号の前処理よる同定精度の向上と信頼性が低い場合の対策について昨年度得られた基本特性の実験結果を拡充して行う.2) 基本的な映像要素で構成された立体映像視聴時の生体影響調査では新たにCGを利用してカメラ運動と視差を任意に変えた映像を作成し,その映像を視聴した際の影響の調査を行う.基本的な実験方法と解析方法は23年度と同様とする.3)映像の主観による評価では2)で行う実験時に主観評価も行うことでデータの収集を行い得られた結果から映像要素と主観評価との対応関係について評価する.さらにこの時に自律神経活動と主観評価との関係および映像要素と自律神経指標との関係についての基本的な検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は映像視聴実験の実施に必要な機器や消耗品と生体信号の非接触計測の基礎的実験のための部品等の購入を中心に行うが,いずれにおいても価格が50万を超える物品の購入の予定はない.
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