研究課題/領域番号 |
23500149
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
平川 正人 島根大学, 総合理工学部, 教授 (30173222)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ユーザインターフェース / マルチモーダルインターフェース / スマートセンサ情報システム / 画像、文章、音声等認識 |
研究概要 |
これまでは手足や頭部など我々が陽に見て取れる身体の3次元動作に注目が集められているが、センサマット上の歩行に伴って現れる足圧分布データは、人間に一切の負担を課すことなく取得できるパーソナル情報として有用である。本研究では、そのような足圧分布から歩行者の感情や心理状態の推定に挑む。初年度は、多数の人々が歩行するという現実的環境下にあって、他の歩行者との距離が接近してもそれぞれの靴を正しく区別しながら歩行動作を着実に追跡することを可能にする技術の確立を目指した。具体的には次の2項目について研究を実施した。1) 複数の人間が同時にマット上を任意方向に歩行している場合にも、それぞれの靴を判別し、トラッキングできるように機能改良する。2) 歩行動作の特徴抽出の精度を改善する。靴の軸方向の認識率については80%まで高めることで、次年度以降に実施する歩容の推定達成を支える。 まず項目1)について、これまでは2次元DPアルゴリズムを用いていたが、歩行者が対象領域に進入してきた最初の時点で靴のモデルを自動取得する必要があり、また靴底面が完全に接地しなければマッチングが遂行できないという制約があった。そこでパーティクルフィルタを用いた新たな靴領域検出・追跡アルゴリズムを実装した。現時点では歩行者の30cm程度までの接近には対応できているが、今後さらに精度ならびに処理速度の改善を図る必要がある。項目2)については、今後の追加実験は必要であるが、第一段の評価実験においては誤差6.7%の結果が得られ、当初掲げた目標を達成することができた。 これに加え、取得した靴領域データから、インバースキネマティックスを用いて歩行者の下肢動作を推定する基本機能、ならびに推定結果の確認・評価に供するための可視化ツールを実装した。また研究成果については、しまね情報分野産学交流会2012にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に計画していた研究課題を機能面では達成するとともに、次年度の研究課題として計画していた姿勢推定について一定の技術を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で目指す歩行者感情推定を確実にするための研究を果敢に進める。システム実装に集中した結果として、対外発表については今後の対応を要する事項であり、周辺技術の調査を踏まえながら、次年度以降は研究を実行する。また、研究室環境に限られることなく、実環境での動作を強く念頭において技術の洗練化を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度執行予定であった研究費のうち、主に対外発表等に係る旅費の執行が当初計画に比べて減額になった。これについては研究遂行上、H24年度計画分の機能の一部についてもシステム開発に着手した方が適当であるとの考えに基づくものであったが、その分、開発に時間を費やすこととなり、対外発表等の機会を設けることができなかったためである。H24年度にあっては、これまでに獲得した研究成果を積極的に発表するとともに、関連分野の研究者との必要な意見交換も含め、H23年度に達成し得なかった事項について確実にフォローアップするように、残額を含めたH24年度研究費を充当する計画である。 技術的には、足圧分布データから推定した歩行者の姿勢が実際の姿勢と合致するかについて客観的に評価することを中心に研究を遂行する。また、具体的応用を指向した実験環境の構築を図り、実社会への技術移転を加速するための課題遂行に研究費を執行する。より具体的には、まず、モーションキャプチャシステムを用いて実際の歩行姿勢を取得・記録し、平成23年度に実現した下肢姿勢推定結果と比較検討する。必要な姿勢推定処理の改良に取り組み、最終ゴールである感情推定に供するレベルにまで性能を高めるべく研究を進める。一方、歩行インタフェースの有用性を実証するために、タッチパネル操作機能を加味したデジタルサイネージシステムの構築に着手する。次年度はまず実験システムのハードウェアを組み上げ、最終年度のソフトウェア開発の準備としたい。
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