研究課題の最終年度にあたり、前年度までの研究活動成果を踏まえつつ当初計画に沿って、センサマット上を歩行する人間の足圧データから感情を推定する手法について研究を実施した。具体的な取り組み内容は以下の通りである。 1) 歩行者の感情識別の実現と検証・評価に活用するための歩行データの取得を行った。各種の感情下にある被験者から実際に歩行データを収集できることが理想であるが現実的には困難なため、関連研究を参考にして、劇団に所属する劇団員に依頼し、平常(ニュートラル)を含めた合計7つの感情を表現した歩行データを収集した。2) 歩行時の足圧データから特徴となる項目を見つけ出す前準備としてまず歩行領域の正規化を行うソフトウェアを構築するとともに、感情推定に利用し得る5つの歩行データ特徴(重心点移動の加速度、踵接地から最大足底圧到達までの時間など)に注目し、項目1)に説明した実歩行データを用い、感情推定を実現するソフトウェアシステムの構築にあたった。しかしながら感情識別は実用レベルにまでは至っておらず、更に研究が必要である。3) デジタルサイネージ応用に向けて、対象(歩行)者のためのタッチパネル操作機能に加え、歩行者と並進してメッセージ提示することを実現するシステムアーキテクチャについて考察した。 なお本研究活動の成果は、学術論文発表の他、中学生を対象にした研究活動紹介イベントを通して、社会に向けて発信を行った。
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