研究課題/領域番号 |
23500154
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
立山 義祐 慶應義塾大学, システムデザイン・マネジメント研究科, 特任助教 (30543558)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ / 没入ディスプレイ / ドライビングシミュレータ / 自動車運転観察 |
研究概要 |
没入ドライビングシミュレータの改良を行った。没入ディスプレイでは観察者の位置姿勢をオンライン計測する必要があるが、今まで磁気式位置計測装置を用いていた。今回、光学式位置計測装置Optitrackを導入し、我々が開発中の没入ディスプレイ用基盤ソフトウェアOpenCABINライブラリで計測結果をオンライン利用できるようにした。また、没入ディスプレイでのOptitrackのキャリブレーション手法を確立した。没入ディスプレイにおける観察者の位置計測では、スクリーンとのオフセット位置を正確に設定しておく必要がある。今回導入したOptitrackシステムでは、予算の都合上、カメラ台数を充分確保することができず、測定範囲が小さくなっている。ドライビングシミュレータでの使用時には問題がないカメラ配置にしたが、キャリブレーションスクエア(計測原点)をCave座標原点に設置する事が困難であった。また、計測時の観察者頭部位置付近に計測原点を設置したほうが計測誤差が少なくなる可能性が高いとの考えから、キャリブレーション時に特別な台を設置してその上にキャリブレーションスクエアを設置することとした。これらの作業の結果、既存の没入ディスプレイで観測者からの距離が1m程度の近い仮想物体を表示する際、表示位置誤差が見かけ数十cm程度に感じられるほど非常に大きかったが、数cm程度に収まった。また、VR酔い軽減策の実験に着手した。映像パターンの中をウォークスルーする環境を作成し、体感してみた。その結果、表示コンテンツとウォークスルー速度によっては、仮現運動すら生起されず、視覚誘導性自己運動知覚が生成されないことがわかった。VR酔い軽減策の一つとして、擬似的なモーションベースの効果を期待し、ブレーキをかける際、映像全体を傾ける手法を考案し、実験してみた。複数の被験者で実験したところ、酔いの軽減は確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光学式位置計測装置の導入については作業が完了した。コンテンツ作りの工夫についても、磁気式使用時には自車の屋根やルームミラー等、観測者に近い物体の除去によってVR酔い低減を試みていたが、光学式位置計測装置の導入によって、酔いは大幅に低減されたように感じた。高齢者のVR酔い対策であるが、こちらは予想以上の困難を感じている。2名の高齢者による運転観察実験を行い、一名の時には磁気式、もう一名の時は光学式を用いた。磁気式の際にはVR酔いが発生し、即座に実験中断せざるを得なかったが、光学式の時にはVR酔いが見られなかった。個人差もあると思われるが、「VR酔いが発生したら、その軽減策をとる」という方針では実験はうまくいかないことがわかった。よって、VR酔いが起きにくい、狭い視野角、単眼映像提示等の条件から実験を進めたほうが良いのだが、実験時間が長くなるのも被験者の疲労の影響が出て良くないことが想定される。次年度からは、まずは酔いの起きにくいシステム構築の方を優先させることにして、酔いやすい方への映像提示方式の工夫についても引き続き検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、コースの中に他の自動車や自転車、歩行者等、動く仮想物体の組み込みを検討する。また、引き続き、VR酔いの軽減策について実験を進めていく中で、酔いやすい方(高齢者含む)に対する対策も検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り、実験装置の改良等を行う予定である。また、対外発表、論文投稿等を行う予定である。
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