本研究は一般に普及するスマートフォンやタブレットPC等のタッチパネルを視覚障害者が容易に利用可能となるように,触れていることと音とを組み合わせたシンプルな方法を基礎に,直感的なグラフィック理解を助けるための情報補償技術の確立を目的としている.研究者のグループでは,これまでに(1)音階と動物の鳴き声を組み合わせた神経衰弱ゲーム,(2)画面をタッチする位置と順番・タイミングを記憶することで音楽を演奏するゲーム,(3)音階と楽器の音色を利用したマルチタッチ2次元図形提示,(4)ヘッドフォンを利用した指先振動フィードバックによる3D図形提示,(5)文房具などの日用品を用いた音楽作曲システムについて,合計76人の全盲の被験者による評価を行った.最終年度はこれらの5つの研究例の分析を中心に研究のまとめを行い,以下のような興味深い結果が得られた. ・全盲もしくはそれに近い重度視覚障害者が,タッチインタラクションを通して,画面レイアウトの把握,2次元・3次元の図形認識が可能であること. ・全盲もしくはそれに近い重度視覚障害者が,タッチインタラクションを通したレイアウト把握や図形認識を含む,神経衰弱ゲーム,地図コンテンツ,音ゲーム,迷路ゲームなど長時間を要する場合でもストレス無く楽しめること. ・全盲もしくはそれに近い重度視覚障害者が,視覚障害に配慮したインタフェースをユニバーサルデザインとして用いることで,晴眼者とともに作業を行い,リーダーとして作業を牽引しうること これらの結果を端緒とし,今後は未来の視覚障害者支援技術確立にむけた,より深い基礎研究に着手する予定である.
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