研究課題
<研究実施計画>本研究課題は、映像と香り・気流が一体として提示できるスクリーン方式の感性マルチメディアディスプレイ(KMMD)を試作し、3次元の映像を表示すると共に、表示対象の近くから香り、又は、気流を提示し、心理的効果をアンケートによる主観評価、及び、生体反応計測装置を用いた客観評価により明らかにするものある。このために、サブ課題として、(1)スクリーン方式のKMMD 構成法、(2)観察者の位置検出と気流や香りの提示法、(3)映像・香り一体提示コンテンツの感性評価法を設定する。初年度は、(1)(2)に重点を置き、感性評価のための実験環境を構築する。2年度は、実験環境の改良と共に、様々な映像に香り・気流を提示し、感性を評価する。最終年度は、香りの有無によるコンテンツ評価を検討する。<平成24年度の研究実績>スクリーン方式のKMMDにおいて、画面裏側に複数の香り放出機構を設け、香り付き映像を表示できる環境を整えた。香り提示方法において、映像と香りを協調的に表示するためには、利用者が吸気状態にあるときに香りを放出することが望ましい。しかし、呼吸状態を非接触な手段で検出することは簡単ではない。そこで、コンテンツによって利用者に吸気動作を誘導する方法を検討した。映像に連動するように風触覚を提示すると、反射的な吸気動作が起きることを明らかにし、当該吸気動作モデルに基づき香りを提示する実験を行い高い香り知覚率を得た。映像・香り一体表示の感性評価において、KMMDを用いて映像提示場所と香り放出場所の位置ずれをパラメータにして視線動作を分析し、臨場感に関するアンケートを行った。その結果、位置づれ量とともに視線動作には特徴的な変化が見られ、アンケート結果と合わせて考察すると、KMMDは自然な表示が可能であることが分かった。これらの成果は、国内外の学会に発表した。
2: おおむね順調に進展している
試作した大型のKMMDを用いて、映像表示位置と香り放出位置の一致、不一致の影響を視線動作から評価した。その結果、両者の位置ずれをパラメータとして、視線動作パターンに変化が見られることを明らかにした。視線の分析とアンケート結果より、視聴者は、映像・香りに位置ずれがあると、矛盾を感じ、当該矛盾を確認するために探索的な視線動作行うと言う興味深い結果が得られた。臨場感を評価する指標として利用できる可能性がある。また、映像に香りを連動させて提示する際に課題となる香り提示タイミングの制御に関して実験を行い、空気触覚提示を伴う香り提示法を提案し、香り知覚率を向上させる可能性を明らかにした。これらの結果は、国際会議、国内会議で発表した。また、学会紙論文に投稿中である。
映像と香りの提示場所を任意に制御できるKMMDの原型を開発しつつある。この実験装置を用いると、様々な香り付き映像を表示して心理効果を評価できる。映像と香りが協調的に表示されれば、臨場感の向上につながると思われる。臨場感評価方法を提案しながら、香り付き映像が自然に知覚される条件を明らかにしていく。映像に連動して香りを知覚させるためには、吸気に合わせて香りを放出する技術が課題であるが、空気触覚を組み合わせた香り提示方法を提案しているので、この実用性を評価していく。また、心理的効果の応用についても研究を発展させていく。例えば、香り付き映像を表示することによって、快適な空間を生成すると、体感温度を変化させることができる実験結果を得ている。省エネ技術として可能性を検討したい。
最終年度であるため、プロジェクタ式KMMDの実験環境を整備しつつ、被験者実験により、映像と香りを一体的に表示する装置の意義と効果を明らかにする。臨場感向上や香り知覚率の向上、心理的作用の応用などが主な課題である。評価手法としては、アンケートによる主観評価に加えて、脳血流計測装置、生体信号計測装置を用い客観的評価を行う。これらの検討を通じて、新しい視・触・嗅覚提示方法を提案する。このため、被験者実験を実施するための計測装置付属部品、電子部品、香料、及び、コンテンツ制作のための材料を購入する。また、国際会議や学術論文を発表する。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)
Human Olfactory Displays and Interfaces: Odor Sensing and Presentation
巻: - ページ: 60-85
ISBN13: 9781466625211
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Proceedings of SIGMAP 2012 - 7th International Conference on Signal Processing and Multimedia Applications, 24-27 July, 2012, Rome, Italy
巻: SIGMAP-No.33 ページ: 151-156
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ヒューマンインタフェースシンポジウム2012論文集
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