研究課題
人が共に食事をする「共食」を例題に,情報学,心理学,言語学から会話コミュニケーションを分析し,得られた知見から相互行為モデルを構築し,日常的コミュニケーションの仕組みを明らかにし,コミュニケーション支援システムを実現するため研究を進めた.評価用共食コーパスを作成し,世代をまたぐ(30代,40代,50代)3名の友人同士3組の食事なし会話,食事あり会話,映像を介した食事会話を収録した.作成した映像コーパスをNII,千葉大に配布し,共通のデータを用いる共同研究体制を構築した.人の行動データ(視線,発話,食事動作)を書き起し,そのデータから参与者らが視線や表情,仕草によって表出する態度を解釈し,会話の順番交替の仕組みを明らかにした.分析から,参与者相互に表出された態度を理解することにより協力的な順番交替がなされていることを示唆した.H25年は,共食中の聞き手の応答と摂食動作を分析し,参与者全員の行動形成の仕組みの解明を狙った.分析から,聞き手は自分の応答後に隣接させたり,もう一人の聞き手の応答を利用して摂食することにより,聞き手の役割を果たしていることを示唆した.すなわち,聞き手は会話への関与の度合いに応じて摂食のタイミングを調整し,コミュニケーションの構築に寄与していることを示した.また,H25 年は,お互いの食事時間がずれている場合に非食事者の代わりに疑似的に食事動作をするインタフェースエージェントSurrogate Dinerを開発し,一緒に食べている感覚が得られることを明らかにした.また,食事場面を撮影したビデオメッセージを通じて非同期に疑似的な共食をするシステムを開発し、ビデオ内の食事の進行をユーザの食事の進行に合うようにビデオの再生速度を動的に調整することで、共食効果が改善され,コミュニケーションに変化を生じることを明らかにした.これらシステムの評価は現在継続中である.
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