研究課題/領域番号 |
23500159
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
包 躍 東京都市大学, 知識工学部, 教授 (20283103)
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キーワード | レンチキュラーレン / 多層化 / 奥行き感 / 光線制御 / モアレ |
研究概要 |
本研究はピッチの粗いレンチキュラーレンズと焦点近傍での画像多層化により、従来のレンチキュラーイメージより遥かに深い3次元奥行感を提供することを目的とする。予測される問題点の一つはレンチキュラーレンズの焦点近傍での画像多層化であるが、この対策としては繰り返し段差を持つ立体形状拡散板をスクリーンとして導入し、画像のずれを抑制しながらこれまでにない超深い3次元奥行き感を提供可能なレンチキュラー式3次元画像表示を実現させる。前年度は計画通りに静止画表示実験ができたので、今年度は市販の動画表示ディスプレイへの対応と、動画表示に発生するモアレの問題について研究を行った。動画表示ディスプレイに適用可能な立体形状拡散板の作成法を確立させるため、印刷媒体を用いた動画表示と複数の動画ディスプレイをハーフミラーを用いて疑似的に焦点面付近に多層化させる表示など、様々な実験を行った。その結果、当初のレンチキュラーレンズの焦点近傍での画像多層化法よりも有効な焦点近傍多層化法が考案された。新しい方法は当初予定のスクリーン面を物理的に削って多層化させる方式と異なり、光線を屈折させるだけで1枚の動画ディスプレイをレンチキュラー焦点面で多層化することができる。これによりレンズのディストーション問題が発生するプロジェクターを用いなくてもシステム構築が可能になった。また、動画ディスプレイを用いる場合は前年度の印刷媒体を用いた時に無かったモアレの問題がある。動画ディスプレイの画素が等間隔に配置されているため、要素レンズが等間隔に配置されているレンチキュラーレンズ越して見るとモアレ干渉が起こり、画像が見え難くなる。この問題を解決するため、レンチキュラーレンズやピッチ幅が簡単に変えられるパララックスバリアを用いて実験システムを作成し実験と検討を行った。これにより新しいモアレ低減法が考案され、その有効性を実験で確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
①市販のディスプレイでシステムを構築するため、レンチキュラーレンズの焦点近傍での画像多層化について印刷媒体とディスプレイを用いて実験と検討を行った。その結果、より有効で実用的な新しい方法を考案した。この方法は当初の予定であるスクリーン面を3次元的に加工して多層化するのではなく、光線制御によりスクリーン面を多層化するものであるため、プロジェクターだけではなく、当初の方法では適用できない通常の平面電子ディスプレイにも適用できるようになった。②新しい多層化方式に対応可能な3次元画像作成法について検討し、新方式に適用可能な3次元CGを実際に作成した。③平面ディスプレイで動画を表示するときに発生するモアレ干渉の問題について検討した。前年度の印刷媒体による静止画実験では発生しなかった原因や、印刷とディスプレイを用いた場合の特性を分析し、モアレ干渉を低減させる方法を考案した。④平面ディスプレイを用いて動画表示システムを試作し、表示実験を行った。
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今後の研究の推進方策 |
光源、繰り返し段差を持つ立体形状スクリーン、レンチキュラーレンズ、プロジェクタなどを一体化するように立体ディスプレイ装置を製作する予定でしたが、24年度で新しく考案した光線制御によりスクリーン面の多層化法の実用性が高いため、まず後者に基づいて立体ディスプレイ装置を製作する。装置が完成すれば、比較実験、評価実験を行うとともに特許出願などの必要性があるかどうかについても検討する。最終的にはこれまで研究室と協力関係にある会社を通じて実用化もはかりたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
光線制御によりスクリーン面の多層化法を考案したので、高解像度のプロジェクターや光学定盤などを用いなくても基礎実験ができるようになったため、本年度は残額が発生しました。この分は次年度と合わせて、下記の優先順位で使用する予定である。 1.研究計画が変わったことで作業量が増えたため、研究アシスタントを雇用する。 2.実験システムを構築するため、レンチキュラーレンズ、プイズムシート、高解像度ディスプレイを購入する。 3.比較実験を行うため、光学定盤や高解像度プロジェクタを購入する。
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