本研究では、ピッチの粗いレンチキュラーレンズと焦点近傍での画像多層化により従来のレンチキュラーイメージより深い3次元奥行感を提供することを目的として、下記項目の実施を行った。 まず当初の予定通り立体拡散板で静止画実験を行った。この実験では、深い3D映像が得られることを確認したが、予想とおりディストーションの問題が発生した。その対策を検討するため、印刷媒体を用いた3D映像表示実験と複数の液晶ディスプレイをハーフミラーを用いて焦点面付近に多層化させる3D映像表示実験を行った。その結果、プロジェクタを用いなくてもレンズ焦点近傍での画像多層化が可能であることが分かった。 液晶ディスプレイを用いる実験では、モアレの問題が想像以上顕著に表れたため、モアレ対策の研究を行った。その波及効果で従来のパララックス裸眼3D表示法にも使えるモアレ軽減法が考案された。 ハーフミラーを用いて焦点面付近の多層化は高分解能な深い3D映像を得ることができる。しかし、装置が大きくなるため、薄型化の検討を行った。その結果、複数の半透明液晶ディスプレイを使う方法が考案された。試作システム用いた実験ではその有効性が確認された。実験では表示用の元画像をCGで取得していたため、実写画像で取得する試みも行った。その結果、新しい自由視点3D撮影法を考案した。また、評価実験ではHMDを用いて3D映像提示し、深さを比較した。その中でバーチャルTV面を実空間中の自由な深さに固定する方法を考案した。本研究の最終結果としては、様々な形式でレンチキュラー焦点面で多層化する方法を検討したが、コスト面を考慮しなければ、複数の半透明液晶ディスプレイを使う方法が最も良いという結果が得られた。現在、商品化の可能性について関連会社に打診している。また、画面の大型化のため、プロジェクタを用いた方法も進めているが、まだ満足できる結果が得られていない。
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