研究課題/領域番号 |
23500160
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
飯塚 重善 神奈川大学, 経営学部, 准教授 (40551073)
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研究分担者 |
郷 健太郎 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (50282009)
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キーワード | 情報環境デザイン / 安心 / プライベート情報 / 情報提示方法 / 大型公共ディスプレイ |
研究概要 |
公共空間においてインタラクティブな大型ディスプレイを用いたデジタルサイネージなどの情報機器が増加し,近年では個人情報もクラウドデータとしてオンライン上で扱われることが増えてきていることから,これらの個人情報を公共空間のディスプレイで一時的に利用するといった利用方法が考えられる.そこで本研究では,インタラクティブな大型公共ディスプレイでプライベート情報提示するためにどのような方法が適切であるかを検討し,候補の中から有効と考えられる方法を用いてプロトタイプシステムを作成して評価をおこなった.まず,学内での公共ディスプレイ設置時の動線調査を目的とした簡易実験結果を踏まえ,公共の大型インタラクティブディスプレイ上への情報の表示方法および操作方法の検討を実施し,第一案として,ディスプレイ上への個人情報の表示領域を,情報利用者の死角に入るように,周囲の他者の動きに合わせて移動させる,という方法を採用した.この第一案についての実験により,利用中に画面が動くことに対する利用者の抵抗が大きい,すなわちユーザビリティの低下を招くことが確認された.そこで第二案として,情報利用者に対して,周囲の状況に関する情報を提示する方法を採用することとした.この方法についてもプロトタイプを構築し,周囲の情報を情報利用者に「そのまま映像で提示する」,「危険度を示す色で提示する」「これらの両方で提示する」という3つの手段についてその効果を比較する実験を実施した.その結果,色で表された危険度を提示することよりも,利用者に状況そのものを見せることが利用者の安心感を与える効果があることが確認している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実施スケジュールにておいて,当該年度は,実験室実験,表示・操作方法検討を経て,プロトタイプ構築までを計画していた. 実際,当該年度ではまず,学内での公共ディスプレイ設置時の動線調査を目的とした簡易実験をおこなった.その結果を踏まえ,公共の大型インタラクティブディスプレイ上への情報の表示方法および操作方法の検討を実施し,第一案として,ディスプレイ上への個人情報の表示領域を,情報利用者の死角に入るように,周囲の他者の動きに合わせて移動させる,という方法を採用した.この第一案について簡易システムを用いた実験をおこない,この方法の効果の測定を実施したところ,利用中に画面が動くことに対する利用者の抵抗が大きい,すなわちユーザビリティの低下を招くことが確認された.そこで第二案として,情報利用者に対して,周囲の状況に関する情報を提示する方法を採用することとした.この方法についてもプロトタイプを構築し,周囲の情報を情報利用者に「そのまま映像で提示する」,「危険度を示す色で提示する」「これらの両方で提示する」という3つの手段についてその効果を比較する実験を実施した. このように,簡易な実験に基づく手法の考案や,その効果の検証,さらに別の,より効果が見込まれる手法についてもプロトタイプ構築し,実験まで実施する,という段階まで当該年度で進めることができた. そして,これらの実験結果や知見についてまとめ,学会発表をおこない,さらにフルペーパーとして投稿もおこなった. これらのことから,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
大型公共ディスプレイ上に,情報利用者向けに提示する周囲の状況に関する情報について,より効果的な方法を検討する. 並行して,周囲の状況に対する安心度への寄与要因の抽出やその度合いをもとめ,それらを基にした安心度の計測および算出方法の策定に向けた調査,検討をおこなう.
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次年度の研究費の使用計画 |
情報利用者への呈示情報の精度を向上させるため,さまざまな状況が予想される公共空間での情報環境デザインに向けた実データの充実化,環境のバリエーションを増やした行動観察に用いる. 加えて,国内外の研究者からの意見等を広く求め,研究の質,精度をさらに向上させるため,昨年度の成果を積極的に外部で発表する費用として,国内外の渡航に活用する。
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