本研究の目的は、事前に学習してあった既存識別関数系を利用することにより、新規カテゴリの識別を効率化・高度化するための手法を確立することである。 前年度の研究においては、主として一般画像の類似度検索を対象とした研究を実施し、特に与えられた検索クエリの特徴を強調するような重みベクトルをその都度学習する方式において、既存識別系を利用することにより学習コストの低減がはかれることなどを示している。今年度の研究においては、前年度の結果をふまえ、既存識別系の線形結合や既存識別系の出力値を用いたデータサンプリングによるデータ削減などの高速化手法と共に、与えられた特徴ベクトルの次元圧縮手法により次元数を削減することによる高速化効果・検索能力の変動の検証と前年度提案手法との比較を行った。今年度の研究においては、次元圧縮手法としては線形手法であるPCA(主成分分析)と非線形手法であるRBM(restricted Boltzmann machine)に基づくauto-encoderを用い、次元を大幅に低減した後にクエリ提示後の重み学習(線形SVMモデルを使用)を行った。学習速度や検索性能比較実験などを行った結果。昨年度有効性を検証した手法と比較して、学習時間は同程度で識別性能はむしろ向上することが確認された。 画像類似度検索は、クエリを新規カテゴリとみなす一種のカテゴリ認識と考えることができるが、本年度は、画像領域のスーパーピクセルへの分割後のカテゴリ認識による領域認識手法の研究も実施した。画像全体を対象とした類似度計算を行う識別系を用意し、少数の識別結果サンプルを記憶しておくことにより、各画像に許容されるカテゴリや隣接スーパーピクセル対のカテゴリ組み合わせに制限を与える手法を考案し、実験によりその有効性を確認した。
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