研究課題/領域番号 |
23500175
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
八槇 博史 名古屋大学, 情報基盤センター, 准教授 (10322166)
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研究分担者 |
瀬島 誠 大阪国際大学, 現代社会学部, 教授 (60258093)
藤本 茂 一般財団法人平和・安全保障研究所, 研究部, 客員研究員 (80319425)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マルチエージェントシミュレーション / 機械学習 |
研究概要 |
本研究は、政治学、経済学などの社会科学の分野で広く用いられているマルチエージェントシミュレーション(MAS)について、その中で用いられるシミュレーションモデルを実際の社会データから自動的に生成する手法を開発し、その有効性を検証することを目的としている。具体的には、カーネルマシン、隠れマルコフモデルなど最新の機械学習の成果を用いて、貿易・通貨・軍事などの国際的事象に関する実データから自動的にシミュレーションモデルを抽出する。得られたモデルに関して、その妥当性の定性的な評価を社会科学の研究者が行い、またシミュレーション研究やゲーミング研究に適用することで定量的な評価と改善を行う。当該年度においては、モデル生成機構)に関する検討を中心に行った。複数の機械学習によるモデル生成機構プロトタイプの開発:ターゲットとするシミュレーションの特性や、使用する国際関係データの性質に応じて異なる機械学習方式を用い、得られるモデルのものから目的に合致したものを選択して用いるための、複数方式によるモデル生成機構の試作を行った。国際関係データの調査:将来的にシミュレーションモデル生成のための基礎とするために、存在するデータについて検証し、本研究で想定する用途に即してそれらの利用可能性を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はモデル生成機構と使用すべきデータに関する調査を行い、これに関しては当初の目標を達成した。その一方で、シミュレーション研究の試行についてはまだ成果を得るところまではいたっていない。原因としては、データの調査の結果、既存データのみを学習対象とした場合、適用する機械学習の手法によっては十分な数の事例を集められないことが判明したことなどが挙げられる。この問題への対応のため、被験者を用いたゲーミングによるデータ収集手法などを新規に開発するということを行ったため、そのぶんの遅延を生じている。この遅延は早期に解消される予定である。その他、年度当初にあった、いわゆる「科研費3割減」の影響により、積極的な経費執行などが困難であったため、連絡調整や機器の整備に遅延が生じたことも要因としては挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究での提案方式によるシミュレーション研究の試行を早期に実施する必要がある。次年度に使用する予定の研究費が生じた理由も、この部分の遅延に原因があり、当該経費はこのために必要な被験者実験を実施するためのものである。これを次年度早々に実施する。以降は、初年度に実施した一連の試作・試行に基づいて、三つの研究項目のそれぞれについて研究を進める。モデル生成システムの開発:初年度に試作したプロトタイプに基づいて、本応募研究の成果となる、機械学習に基づくモデル生成システムの開発にとりかかる。プロトタイプ段階よりも使用するデータの範囲を広げ、より多くのモデル構築に適用可能なものとして実現する。出力はGPGSiM上のモデルを想定するが、場合により他のシミュレーション環境への対応も視野に入れながら開発を進める。モデルの定性的性質の評価手法検討と支援システムの開発:複数の機械学習方式を併用することから、出力されるモデルの特性を研究者が把握するための方法と、それに基づいた評価支援システムとを提供する。初年度の試行結果をもとに、平成24年度内に定性的把握の方法について2名の研究分担者が主に検討を行い、それに基づいて研究代表者が上述のモデル生成システムに連動する支援機能を実装する。シミュレーション研究実施による手法の評価:上記で構築したモデル構築と定性的評価手法に基づいて、実際に国際政治に関するシミュレーション研究を実施し、本提案の有効性についての検証を行う。検討対象は、得られたモデルの性能と、シミュレーション研究におけるモデル構築コストの低減効果とが中心となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度から繰越しが行われている経費については、被験者実験を早期に実施するのに用いる。24年度は前年度に開発した技術をもとに、生成されるシミュレーションモデルの評価とそれに基づく技術の改善とを主に行い、同時に研究成果の発信を開始する。データ投入や分析作業の増加のため、PCの追加購入を行う。計算機借料とデータアクセス費用、および研究補助に関しては前年度と同様である。その他、研究成果の公表を開始するため、英文校正と論文別刷りの費用を計上するほか、成果報告用の海外旅費を計上している。研究代表者・分担者の間の連絡調整が頻繁に必要となるため、国内打ち合せ費用を多めに計上している。
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