研究課題/領域番号 |
23500180
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森本 康彦 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00363010)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | Skyline Query / Data Mining / Privacy / Distributed Databases / Cloud / Big Data |
研究概要 |
何らかの属性値で他のデータに比べ良いか等しいものを含むデータのみをデータベース中の大量のデータの中から選択し列挙する機能を「スカイライン問い合わせ」と呼ぶ.スカイライン問い合わせで得られるデータ集合のなかには,ユーザの多様な要求を満足させるデータが含まれている.そのため,スカイライン問い合わせは,意思決定,情報フィルタリングなど多くのアプリケーションに応用されている.我々は,個人情報保護の観点から,個々のデータ内容を他者に開示しない新たなスカイライン問い合わせ機能を開発してきた. 近年,多くのデータがクラウド環境で管理されるようになっているが,クラウド環境下ではデータは分散して存在している.我々は個人の特定につながるID情報が隠されていたとしても,データベースの個々のレコード内容は開示すべきではないという立場をとっている.これまで開発していた手法でスカイライン問合せを計算しようとすると,分散データベースでは,その計算過程,通信路などで他者に,一部のレコード内容を知られてしまうというセキュリティ上の問題があった. 本年度は,分散データベース上で,効率的にかつ安全にスカイライン問い合わせを計算するための新たなアルゴリズム,および通信プロトコルを,エージェント技術を応用して開発した. 本年度の成果は,学術雑誌「International Journal of Computational Science and Engineering」の2012年,第1巻,第1号に発表したほか,国際会議「ICISA 2011」,「ICNC 2011」,「DNIS 2011」などで口頭発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23(2011)年度の前半は,震災対応のため交付予定額のうち3割を使用しないように指示がでていた.研究初年度であったため3割を削減してしまうと最終年度までに計画を達成できなくなるため,研究費3割削減の影響を少なくするための計画変更を行った. そのため,当初購入予定であった実験用の機器の購入を控え,一部の開発やフィージビリティ実験は予定通りできなかった. 一方で,本研究に関連深い研究者との情報交換や,学会での情報収集,机上でできる理論設計,アルゴリズム設計,プログラミングなどの研究作業は予定以上に進めることができた.初年度から学会発表を多く行えたのはこうした計画変更の影響からである. 研究計画全体をとおしてやるべきことを評価すると概ねこの1年間で進めるべき分量に達しているので,おおむね順調に進展していると見なせる.
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今後の研究の推進方策 |
分散データベースで効率的かつ安全に計算できる,個人情報保護スカイライン問い合わせ機能は予定通り完成した.次年度以降の早い時期には,次のステップである,より高次なデータマイニング機能の開発を行う.具体的には,時空間情報を使ったスカイライン問い合わせ機能,携帯端末で簡単に操作できるユーザインターフェースをもちながら高度な検索を行うことができる機能などの開発を推進してゆく. また,ここ数年,「ビッグデータ」と呼ばれる大規模情報処理技術とその技術を利用したデータ応用ビジネスが注目されている.本研究もビッグデータの要素技術の一つであると見なせるが,この動きに乗じて,研究成果をビッグデータビジネスへ応用してゆくことも積極的に推進してゆきたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
実験やフィージビリティスタディのためには高性能のサーバ計算機が必要だが,(震災の影響で)2011年度は予定を変更してサーバ計算機の購入を控えていた.次年度は,まず,サーバとして利用可能な性能をもつ計算機を購入する.また,これまでにあがっている未発表の研究成果と,次年度前半に達成可能な成果を公表するために国際会議等へ参加する.
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