研究課題/領域番号 |
23500180
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
森本 康彦 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00363010)
|
キーワード | Skyline Query / Data Mining / Privacy / Distributed Databases / MapReduce / Cloud / Big Data |
研究概要 |
本課題では,データベースに記録されている大量のデータの中から,何らかの知見を獲得したり,データの全体的な傾向を把握したり,必要なデータを選択する際に利用できる問い合わせ機能の研究を行っている. データ集合から,何らかの属性値で他のデータに比べ良いか等しいものを含むデータのみを列挙する機能を「スカイライン問い合わせ」と呼ぶ.スカイライン問い合わせで得られるデータ集合のなかには,ユーザの多様な要求を満足させるデータが含まれている.そのため,この機能は,意思決定,情報フィルタリングなど多くのアプリケーションに応用されている.我々は,個人情報保護の観点から,個々のデータ内容を他者に開示しない新たなスカイライン問い合わせ機能をこれまでに開発してきた. 昨年度までに,分散データベース上で,効率的にかつ安全にスカイライン問い合わせを計算するためのアルゴリズム,および通信プロトコルを,エージェント技術を応用して開発した.特に,H25年度は,「MapReduce」と呼ばれる大規模計算のための計算基盤でスカイライン問い合わせを計算する技術を開発した.近年,「ビッグデータ」と呼ばれている新しい大規模計算技術の応用法が注目を集めているが,ビッグデータ技術の多くがMapReduceをベースに開発されているため,本研究課題でも,この計算基盤への対応が必須であると判断した.H25年度はMapReduce計算基盤を利用した大規模データでのスカイライン問い合わせの実験を行った.他の研究機関の先行研究でも,同様のスカイライン問い合わせの事例が数件報告されているが,我々の方法は,個人情報を意識したスカイラインであるという特徴がある.現時点では,個人情報保護がまだ不十分なため,H26年度以降は引き続き,この問題に取り組んでいく予定である. H25年度は,学術雑誌4編に本課題の研究成果を出版した.また,国際会議で3件の口頭発表を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は,本研究課題でMapReduce計算のための実験を行う予定はなかったが,近年の,ビッグデータ技術の広まりを受けて,昨年度(H25)からMapReduce計算のための実験設備の整備を始めた.MapReduce計算のために必要な固有の計算機器はないが,ある程度の台数の計算機と高速なネットワークが必要なため,それらを整備して,フィージビリティ実験を実施した.本年度以降は,MapReduce計算の設備と理論的な各課題を強化したうえで,当初の計画案にも沿って各課題を進める予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度(H26年度)は,まず,「ビッグデータ」技術の基盤であるMapReduceへの対応を最優先で進める.前述のように,MapReduceでのスカイライン問い合わせの実験にはすでに成功しているので,本研究課題の独自性でもある個人情報保護の観点からの強化に取り組む. また,時空間情報を使ったスカイライン問い合わせ機能,携帯端末で簡単に操作できるユーザインターフェースでありながら,かつ高精度な検索を行うことができる機能などの開発を引き続き行ってゆく.今後は,これらの機能を統合し,目標としている「個人情報を保護したうえでの時空間情報の高度利用」について研究開発を続けてゆく. 本課題の研究期間の半分以上が経過しているため,今年度以降は特に成果発表とPRにも力を入れてゆきたいと考えている.昨年度(H25)までに得られた成果のうちまだ未発表のものは,注目度の高い国際会議で発表するとともに,学術雑誌へも投稿してゆく.
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究発表を予定していた(3月に開催されることが多い)国際会議が4月に開催されるため,海外出張および参加費分を次年度に繰り越した. また,MapReduce計算の実験をH25年度初めて実施した.本格的なMapReduce計算実験には,計算機,ネットワーク機器が,ある程度の質,量で必要となるが,それなりの金額の購入が必要となる.この実験のためのコストパフォーマンスの良い機器選定を的確に行うため,H25年度内では,かなり小規模の機器でのテストを行うにとどめていた.そのため使用額が少なくなった. 次年度は繰り越し分を実験機器の購入にあてる予定である.また,4月に海外で開催される国際会議に参加しH25年度の研究成果を発表する予定である.
|