研究課題/領域番号 |
23500181
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小林 邦和 山口大学, 理工学研究科, 助教 (40263793)
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研究分担者 |
大林 正直 山口大学, 理工学研究科, 教授 (60213849)
呉本 尭 山口大学, 理工学研究科, 助教 (40294657)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マルチエージェント / 強化学習 / 意図推定 / 行動予測 / 注意生成 / 脳情報処理 / ロボット / 機械学習 |
研究概要 |
平成23年度は,主に1.自己学習と他者学習の定義,2.各種モデルの構築,3.ハードウェア/ソフトウェア環境の構築を行った.研究体制を含む研究計画の詳細は,以下の通りである.1.自己学習と他者学習の定義:MASにおけるエージェントの行動学習は,その性質より,自己の基本行動様式を獲得する自己学習と他者との協調行動様式を獲得する他者学習に分けられる.なお本研究では,協調行動は基本行動の組み合わせで表現できるものと仮定する.自己学習で獲得する基本行動は,MAS特有の行動ではなく,原則シングルエージェントシステム(以下,SASと略記)で必要な要素行動と考えられる.従って,先ずSASにおいて,エージェントが要素行動を獲得するように自己学習を行う.次にMASにおいて,エージェントが協調行動を獲得するように他者学習を行った.この他者学習では,以下で述べる状態・行動予測モデルと政策・意図推定モデルを用いて,協調行動を促進するように効率的な学習を図った.【担当:小林】2.各種モデルの構築:既存モデルを基礎として,他者の状態や行動の予測を行う状態・行動予測モデル,他者の行動政策の推定を行う政策推定モデル,他者の行動意図の推定を行う意図推定モデル,複数の感覚刺激の中から特定の刺激のみに着目する注意生成モデル,ヒトの情動を模倣した情動生成モデルをそれぞれ構築した.なお各モデルは,抽象度(脳情報処理の階層レベル)に応じて,階層構造をもつという特徴がある.【担当:小林,大林】3.ハードウェア/ソフトウェア環境の構築:次年度以降のために,ロボット実験におけるハードウェア(設備備品のロボットPALROと制御用パソコン)とソフトウェア(自作)の利用環境を構築した.【担当:小林,呉本】
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的では,マルチエージェントシステムが抱える1.状態空間の爆発問題,2.同時学習問題,3.不完全知覚問題という3つの主要課題に着目し,それらの解決策を提示するというものであった.今年度は初年度であったが,エージェントの学習に関して,これまで着目されていなかった,エージェントが自己の基本行動様式を獲得する自己学習と他者との協調行動様式を獲得する他者学習に陽に区別することを提唱した.次に状態・行動予測モデル,政策・意図推定モデル,注意・情動生成モデルから構成される脳情報処理模倣型統合システムを提案した.上記達成度の判定理由として,平成23年度に得られた成果を図書1編,学術論文8編,国際会議論文7編,国内会議論文8編という形で発表することができたからである.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,主に1.脳情報処理模倣型統合システムの開発,2.ハードウェアシステムの構築を行なう.研究体制を含む研究計画の詳細は,以下の通りである.1.脳情報処理模倣型統合システムの開発:初年度に開発する各種モデルと学習・推論システムを統合し,MASにおける協調行動の創発を指向した脳情報処理模倣型統合システムを開発する.同時に計算機シミュレーションにより,本システムの性能評価を行う.本システムでは,基本技術として,入力情報の特徴抽出と情報圧縮を行う自己組織化写像マップ,部分情報から推論を行うベイジアンネットワーク,動的システムの同定を行う相互結合型ニューラルネットワークを用いる.【担当:小林,大林】2.ハードウェアシステムの構築:ブルートゥース通信という通信方式を用いて,ロボットの入出力制御を行うために必要となる無線通信システムと基幹制御システムの構築を行う.【担当:小林,呉本】
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,物品費として,ヒューマノイドロボットPALRO(富士ソフト製)1台を計上している.このヒューマノイドロボットは,平成23年度に2台購入の予定であった.その内,1台目を研究開始当初に購入し,ハードウェア環境の構築等で使用した.その後,2台目を購入する予定であったが,年度途中で,メーカー側の仕様変更に伴う後継機の発売が予定されていたので,2台目は次年度(平成24年度)に購入することとに変更した.なおこの変更に伴う,研究の遅れは生じていない.また旅費として,成果発表旅費(電気学会部門大会,弘前市,2名),成果発表旅費(電気学会システム研究会,東京都,1名),成果発表旅費(電気学会全国大会,場所未定,1名),外国成果発表旅費(国際会議ICONIP2012,カタール,1名),外国成果発表旅費(国際会議AROB2013,韓国,1名)を計上している.更に,その他として,研究成果投稿料(電気学会論文誌2件)と学会参加費(電気学会部門大会1件,電気学会全国大会1件)を計上している.
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