研究課題/領域番号 |
23500184
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩崎 敦 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 助教 (30380679)
|
研究分担者 |
横尾 真 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (20380678)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | ゲーム理論 / 談合 / メカニズムデザイン / オークション / 架空名義入札 |
研究概要 |
本研究は,談合の存在を考慮した入札方式(メカニズム)をモデル化し,これまでの架空名義操作に関する一連の研究の蓄積と最適化を基礎とするメカニズム設計手法を相互に利用しながら,談合の影響を受け難い組合せ調達メカニズムとその調整技術を開発することを目的とする.組合せ調達メカニズムとは1人の買い手が複数の財やサービスの組合せを複数の売り手から同時に調達する入札方式のことを言う.近年,公共事業の入札などで談合が多発していることが指摘されている.このような社会的に不適切な談合や一円入札を従来の入札方式が防ぐことができない原因として,談合の存在を考慮した入札方式の構造を正しく解析・評価するための理論的基盤が極めて脆弱であることが挙げられる.このため本年度は,基盤となるメカニズムを開発するため,従来の談合を内包したメカニズムのモデルをもとに,従来の単一財調達メカニズムを複数同一財調達へ拡張を検討した.具体的なメカニズムの提案までには至らなかったものの,談合の影響を受け難い複数同一財調達メカニズムのために必要な条件をある程度明らかにできた.一方で,メカニズムの調整技術開発の一環として,架空名義入札と呼ばれる不正行為に対して頑健性を持つオークションメカニズムの設計を例題として,人手が介在する複雑な処理の繰り返しを,発見科学における法則発見の技術を用いて自動化することを試みた.架空名義入札とは,一人の入札者が複数の名義を用いて入札を行うことであり,インターネット等の匿名性のある環境では深刻な問題となりうる.提案したアルゴリズムを用いて,代表的な架空名義操作の影響を受けないメカニズムである適応的留保価格メカニズムの抽出にも成功した.本研究の成果を情報科学技術フォーラム (FIT-2011) に発表し,その最優秀論文賞である船井ベストペーパー賞を受賞した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,従来の談合を内包したメカニズムのモデルをもとに,従来の単一財調達メカニズムを複数同一財調達へ拡張を検討した.具体的なメカニズムの提案までには至らなかったものの,談合の影響を受け難い複数同一財調達メカニズムのために必要な条件をある程度明らかにできた.加えてメカニズムの調整技術開発の一環として,人手が介在する複雑な処理の繰り返しの,発見科学における法則発見の技術を用いた自動化を試みた.ここで,提案したアルゴリズムを用いて,代表的な架空名義操作の影響を受けないメカニズムである適応的留保価格メカニズムの抽出にも成功した.本研究の成果を情報科学技術フォーラム (FIT-2011) に発表し,その最優秀論文賞である船井ベストペーパー賞を受賞した.基盤となるメカニズムの開発は当初の予定通りに進まなかったものの,メカニズムの調整技術には顕著な進捗を得ることができた.また,本研究に関連する成果として雑誌論文10件,難関国際会議11件,国内会議3件の論文を発表している.先に述べた船井ベストペーパー賞を含め3件の受賞があるなど国内外で高く評価される研究成果をあげられたと考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を踏まえて,談合の影響を受け難い複数同一財調達メカニズムの理論的条件を早急に明らかにすることを考えている.さらに,多属性単一財調達への拡張を進め,組合せ調達メカニズムの理論的基盤への一般化を目指したい.また,これらの拡張には,最適化を基礎とするメカニズム設計手法を導入するため,談合の影響を受け難い性質の定式化・導入を進める予定である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
繰越金額は1万弱であるため,次年度の消耗品などで迅速に使用する予定である.それ以外の使用については,とくに当初計画と変える予定はない.
|