研究課題/領域番号 |
23500190
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
大崎 美穂 同志社大学, 理工学部, 准教授 (30313927)
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キーワード | 知識発見 / 多変量時系列 / 検査治療履歴 / 予後予測 |
研究概要 |
慢性病の医療データは大量の多変量時系列から成り,その中から病状把握や治療に役立つ知識を自動的に発見する仕組みが望まれる.本研究では慢性肝炎の検査治療履歴を題材とし,病状のモデル化とそれに基づく既知知識の記述・未知知識の発見を目指している.昨年度は,慢性肝炎の多数を占めるC型慢性肝炎に的を絞り,自己回帰(AR)モデルによる病状の記述,肝線維化ステージ予測に役立つ特徴量の提案と評価,および,肝線維化ステージ予測に役立つ分類器の検討を行った.今年度は,昨年度に特徴量として提案した検査値時系列の平均・標準偏差・LPCケプストラムの組合せを評価する実験を追加し,その有効性をより明確にした.この成果を国際会議にて発表し,学術雑誌論文を執筆投稿した.現在,学術雑誌論文は査読中である.さらに,データ点の少なさゆえにモデル推定が困難になる問題を解決するため,逐次ベイズ推定に基づくARモデルの学習手法を試みた.分類器に関しては,昨年度に,従来研究で用いられた分類器である重回帰,ロジスティック回帰(LOGR),サポートベクターマシン(SVM)を比較する実験を行った.この実験結果に基づき,今年度は,LOGRとSVMの利点を併せ持つカーネルロジスティック回帰(KLOGR)の適用を提案した.KLOGRの評価実験の一部を終え,この成果を国際会議にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度までに,肝線維化ステージ予測に役立つ特徴量の提案と評価,特徴量の改善(逐次ベイズ推定に基づくARモデルの学習),分類器の改善(カーネルロジスティック回帰の適用)を行った.病状のモデル化とそれに基づく既知知識の記述・未知知識の発見という最終目標に照らし合わせると,病状のモデル化については一定の成果を得たと言える.しかし,現状のモデルでは検査値時系列の非定常性を記述できず,改善の余地がある.また,当初の予定よりも実装と実験実施に時間がかかり,分類器の改善とステージ予測の性能向上,および,これらに後続する知識の記述・発見が少し遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であり,本科研費課題の最終目標(モデル化から分類器までの一連のステージ予測システムに基づく知識の記述・発見)に至ることを目指す.具体的には,次年度の前半では,非定常モデルの導入,分類器の改善,ステージ予測の性能向上に重点を置く.そして,後半では,ステージ予測の実験で得られた結果を知識として解釈することを試みる.これらの遂行のため,早期に肝線維化ステージ予測システムの全機能の実装を終える予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度である次年度では,肝線維化ステージ予測システムの完成に向けて,ソフトウェア開発補助のアルバイト謝礼を増額する見込みである.また,これまでの研究成果を公表することに力を入れ,学会発表の諸経費,国際会議講演論文の英文校正料,学術雑誌論文の英文校正料と投稿料を主な使途とする.
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