研究概要 |
本研究の目的は、時空間にかかわる人間の主観的知識を体系的に表現および計算するメカニズムを一つの演繹システムとしてモデル化し時空間言語理解システムとしての応用を試みることである。時空間言語の特徴は他の部分言語と異なり、その表現の意味が視覚的に外界事象と対応づけられる点にある。本研究では、心のモデルを構成する刺激受容系の能動的外界知覚機能に基づき主観的時空間関係知識が知識処理系において形成され主観的ではあるが人間においては一般的な法則が抽出される過程をシミュレートすることになる。方法論的には、まず、与えられた時空間表現(刺激表現)が想起させる外界事象(指示対象)を属性空間の軌跡として抽象化し軌跡式として表現する。続いて、内容的に導出関係にある表現に対応する軌跡式の集合から主観的な法則を抽出し公準として演繹システムに組み込むことになる。1)単語句の収集:英語シソーラスから時空間関係(Spatiotemporal relation)に関する単語句(before,after,avoid,touch,in front of,in advanceなど)を全品詞にわたって抽出した。2)単語の意味分析・記述:1)で抽出された単語句の意味分析および記述を関連する属性空間("色立体"や"味覚立体"に相当)との対応において行った。属性空間は"位置","形","方向"などに関するものである。3)マルチメディア統合理解システムIMAGES-Mのパソコンから高機能ワークステーションへの移植を行った。4)主観的法則の抽出および形式化:典型的な例文を選択して内容的に導出される表現を可能な限り作成し、それらの間の時間論理的関係を定式化した。5)主観的知識の実装および評価:以上の作業により定式化された主観的知識をマルチメディア統合理解システムIMAGES-Mに実装し質問応答処理などでそれらの妥当性を評価した。
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