研究課題/領域番号 |
23500195
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
横田 将生 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (50112313)
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キーワード | 人工知能 / 認知ロボット学 |
研究概要 |
本研究では時空間にかかわる人間の主観的知識を体系的に表現および計算するメカニズムを一つの演繹システムとしてモデル化し時空間言語理解システムとしての応用を試みる。自然言語の中でも時空間に関する部分言語は特に時空間言語(Spatiotemporal Language)と呼ばれ、人間の認知にかかわる基本的な問題(曖昧性、漠然性、同一性、時間性など)を含んでいることからオントロジーの研究などにおいて大きな注目を浴びている。その一方、従来、時空間言語理解に関する多くの研究は英語の前置詞に相当する比較的少数の語句を中心とする事物間の静的位置関係に関する表現にその対象を限定している。しかしながら、時空間における事物間の関係表現、特に、動的なものはS2に示すように大部分動詞を中心とするものであり、さらに複雑な関係は前置詞(あるいは相当語句)中心では不可能である。ところで、時空間に関して一般人が頻繁に発話しかつ容易に理解する自然言語表現のなかには一見非科学的ともとれるものが多く存在する。本申請者は、このような表現には時空間における人間の主観(外界知覚過程の性向、すなわち、時空間に対する心の働き方)が投影されていると考え、心像意味論(Mental Image Directed Semantic Theory)と呼ぶ独自の自然言語意味論を展開し人間の主観的知識の獲得モデルおよび体系的表現と計算に関する研究を行ってきている。本研究の目的は、独自に提案している人間の心のモデルとその機能に関する仮説に基づき時空間にかかわる人間の主観的知識を体系的に表現および計算するメカニズムを一つの演繹システムとしてモデル化し時空間言語理解システムとしての応用を試み有効性に関する評価を行うことにある。 現在までに、数理論理学的に基づき人間の時空間に関する知識を公理として形式化することに十分成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、独自に提案している人間の心のモデルとその機能に関する仮説に基づき時空間にかかわる人間の主観的知識を体系的に表現および計算するメカニズムを一つの演繹システムとしてモデル化し時空間言語理解システムとしての応用を試み有効性に関する評価を行うことにある。現在までに、数理論理学的に基づき人間の時空間に関する知識を公理として形式化することに十分成功している。本年度も前年度に引き続き、多くの国際会議での研究発表および国際ジャーナルでの論文発表を行った。また、International Conference on Aware Science and Technology 2012 (iCAST2012)ではBest Paper Awardを受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
時空間言語の特徴は他の部分言語(Sublanguage)と異なり、その表現の意味が視覚的に外界事象と対応づけられる点にある。本研究では、心のモデルを構成する4つのエージェント(St,Kn,Em,Re)のうち、刺激受容系(St)の能動的外界知覚機能(Active Perception)に基づき主観的時空間関係知識が知識処理系(Kn)において形成され主観的ではあるが人間においては一般的な法則が抽出される過程をシミュレートすることになる。方法論的には、まず、与えられた時空間表現(刺激表現)が想起させる外界事象(指示対象)を属性空間の軌跡として抽象化し軌跡式として表現する。続いて、内容的に導出関係にある表現に対応する軌跡式の集合から主観的な法則を抽出し公準として演繹システムに組み込むことになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本補助金交付初年度において備品となるコンピュータが予定より廉価となり約80万円の未使用金が生じたため、本年度も約20万円の未使用金が生じた。次年度はこれを含めて約110万円を使用する予定である。主として、海外における国際会議での研究発表に必要な旅費(60万円)および自然言語データ収集分析のためのアルバイト費用(40万円)に充当する予定である。
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