今年度は、イメージ現象との関連において人間の直感の機能的モデルを提案した。そのモデルは、人間の認知機構は知覚(Perception)、直感(Intuition)および理性(Reason)の大きく3つの層よりなると仮定している。第1層の知覚では外界刺激から漠然とした分節されていないイメージが生成される。第2層の直感では知覚されたイメージを論理的な間接的過程を経ずにハードウェア的に直接分節する。最後に、第3層の理性がその直感イメージの分節に対して知識を用いたソフトウェア的推論により修正を加える。今回提案した機能は一般的に実現しようとすると非常に困難であるが本研究者が既に提案している知識表現言語Lmd (Mental Image Description Language)を用いたイメージ記述に基づけば従来の方法よりも容易に実現できるということを理論的に示した。具体的に行った事柄は以下のようである。(1)“The path rises as it approaches the woods.” “The buildings stand in a circle.”などの外国語文章が一見非科学的だがほぼ瞬時に理解できる文章について思考実験によりその理由を分析した。(2) (1)の結果より、これらの文章は、生物種としての人間の外界認知過程が直接反映されたものであるとの結論に至った。(3)生物種としての人間の外界認知過程の特徴はゲシュタルト要因によって無意識に駆動される動的注意に依拠する外界刺激の選択受容であると推論された。(4)ゲシュタルト要因を抽出するのが知覚であり人間の外界知覚機構の第1層にあり、第2層に注意の移動を司る直感、第3層に直感を修正する理性が存在するとの推論を行った。(5) Lmdを用いて第2層の出力である直感イメージを計算可能な形式で記述できることを確認した。
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