本研究では,群知能の一手法であるアントコロニー最適化手法を用いて,マルチエージェント環境下における協調行動獲得及びエージェントの試行錯誤により獲得されたものを汎化する手法を提案することを目的とした.さらに,提案手法をマルチエージェントシステムに適用し,評価実験を通して提案手法の有効性を確認した. 群知能の1つであるアントコロニー最適化手法( Ant Colony Optimization;ACO )は,実際の蟻の採餌行動にヒントを得た手法である.蟻はフェロモンと呼ばれる化学物質を用いたコミュニュケーションを行うことで効率的に経路を発見している.具体的には,蟻は最初はランダムに餌場の探索を進める.もし餌が見つかった場合,それを巣(コロニー)へ持ち帰る際,特殊なフェロモンを散布しながら巣へ戻る.他の蟻はこのフェロモンを感知した場合,それに従い餌場へと到達する.これを繰り返し,コロニーと餌場の間の経路は強化されていく. また,蟻の巣には「勤勉に働く蟻」と「勤勉に働いているようには見えない蟻」が一定の割合で混在し,それらが混在することにより巣を効率的に運営されているということを生物学の研究者は報告している.そして,これらの蟻たちにはフェロモン感度に差があることを報告している. 最終年度は,この研究成果にヒントを得て,ACO においてフェロモンへの対応が異なるエージェントが混在する手法を提案した.これによりエージェントの行動に多様性が生まれ,単一種のエージェントでは生成することが不可能であった解の候補の生成を目指した.そして,RoboCup Rescue Simulationを用いて評価実験を行った.その結果から提案手法の有効性を確認した.そして,複数の実験条件においてシミュレーション実験を実施することにより,新たな課題が残されていることを明らかにし,今後の研究の指針を得るに至った.
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