研究課題
本研究では,気づきに基づくフィルタリングを提案し,ユーザの真の選好を見出す推薦システムを探求し,その有効性を検証することを目的とする.その目的遂行のため,北海道周遊旅行プランの推薦システムを構築し,本年度は次の項目を実施した.● 研究項目1: 対話型強化学習によるプランの網羅的探索手法の考案ユーザとのやりとりを通して,ユーザの選好推定を段階的に推定する手法を考案した.具体的には,(i)ユーザの選好を絞り込むために対話的強化学習を採用するとともに,(ii)ユーザ各人に適したプランを見出すために,訪問希望都市を(強化学習の)学習目標として,それらの都市を1つ以上含むプランを網羅的に探索した.● 研究項目2: 多様なプランのグループ化と推薦順序変更による予期せぬプランの発見研究項目1で考案した手法で見出された全プランをその類似性を基にグループ化し,その中で推薦する順序を決めてユーザに提示する.このとき,プランのグループ化と推薦順序を変更することによって,予期せぬ良いプランの発見を促進させる手法を実現した. 真の好みへの気づき支援方法について,被験者実験を通して評価した.被験者実験の結果,70%の被験者が好みプランを遷移させた.さらに,気づき支援の効果について分析したところ,システムが生成した推薦プラン集合に対するユーザの閲覧率の大きさで被験者がほぼ同数の2群に分かれ,気づき支援の効果が両者で異なることを見出した.気づき支援の効果として,閲覧率が大きい(90%以上)群(ヘビーユーザと呼ぶ)では閲覧回数,閲覧時間の短縮(有意差なし)が生じ,閲覧率の小さい(70%未満)群(ライトユーザと呼ぶ)では閲覧回数の増加が5%で有意差があった.(提案手法とその評価を計測自動制御学会,システム・情報部門 学術講演会 2011 (SSI2011),第39回知能システムシンポジウムにおいて発表した).
2: おおむね順調に進展している
今年度の研究目的をおおむね達成し,その研究成果の公表として,国際会議発表2件を含め,計10件の対外発表を行ったため
以下の研究計画通り推進する.・ユーザ特性分類によるユーザの選好推定精度の向上と被験者実験平成23年度に考案した手法ではユーザの特性を考慮していないため,ここでは提案システムがユーザの閲覧行動特性の差異を利用することによってユーザのこだわり度を推定し,ヘビーユーザ(こだわり度大)とライトユーザ(こだわり度小)に分類後,それぞれのユーザ特性にあわせたプランを提示することによって推薦精度を高める.・学習分類子システムによるセレンディピティの実現と被験者実験考案した手法では,都市を追加・削除した新たなプランをユーザに見せることによって,予期せぬ良いプランの発見を支援するという受身的な機構であるため,ここでは都市以外の選択項目(例えば,旅行代金)をシステムが追加する枠組みを探求し,セレンディピティを向上させる能動的な機構に発展させる.この新たな選択項目の学習には,機械学習手法の一つである学習分類子システムを活用する.
・物品費:提案システムの計算時間の高速化(全ノードを探索する手法であるため,規模が大きくなるにつれて計算時間がかかる)と被験者実験の待ち時間の短縮をはかるために,マルチコアコンピュータを導入する. ・旅費:本研究での成果を国際会議,Human-Agent Interaction (HAI)シンポジウムや人工知能学会/計測自動制御学会などの国内学会,研究会で発表する予定である.・謝金等:提案システムの有効性を調査するために,被験者実験の補助,データサーバの構築,アンケートの配布・回収,データ整理などの研究補助費用を計上する.
すべて 2012 2011
すべて 学会発表 (10件)