研究課題/領域番号 |
23500199
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
岩爪 道昭 独立行政法人情報通信研究機構, ユニバーサルコミュニケーション研究所, 統括 (80319756)
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研究分担者 |
兼岩 憲 岩手大学, 工学部, 准教授 (00342626)
小林 一郎 お茶の水女子大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (60281440)
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キーワード | ビッグデータ / セマンティックウェブ / Open Linked Data / 大規模分散データストア / オントロジー |
研究概要 |
スケーラブルなセマンティックサービス基盤技術の実現に向けて、平成24年度は、ビッグデータに対応する大規模な計算機基盤、ミドルウェアソフトウェア群のサービス化についてより具体的なアプリケーション、データを対象に実証検証を行った。 (1)大規模意味資源のサービス指向モデリングについては、センサ機器による実世界情報をモデリングし、Open Linked Dataとして相互運用するための方式を具体的に検証するため、特にヘルスケア/ライフログ分野に焦点を当て、GPSナビゲーション機器、加速度センサ、歩数計、心拍計等の各種機器を用いた検証データの収集に着手した。 (2)スケーラブルなサービス疎結合技術については、意味的なLink情報を介したサービス間の関係性の発見および連携手法を実現するため、H23年度に取り組んだOpen Linked Dataに対するリンク解析の高度化・大規模化に取り組んだ。具体的にはDBPediaの全データを対象としてプロパティ情報意味特徴を踏まえたランキングアルゴリズムの検証した。 また100億リンク規模のWebグラフをPCクラスタ上で高速解析する手法についても検討を行った。 (3)トランススケールなサービスモニタリング技術については、Open Linked Dataを始めとするWeb情報を収集するための計算機基盤、クローラ、分散データストア等のミドルウェアが生成するログデータや動態情報を集約的に可視化するプロビジョニング環境を試作した。特にクローリングサービスにおいては、可視化結果に基づくクローラの各種パラメータのチューニングの結果、従来比で収集性能2倍に向上し、当該手法の有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内においても近年関心が高まっているOpen Linked Dataを対象にしたランキングアルゴリズムの研究開発に着手し、その有効性を確認した。この技術は、今後のさらに大量に流通すると思われるOpen Linked Dataとそれに基づくサービス間の連携において、最も基盤となる情報を提供するものであり、その成果の一部が平成25年度情報処会全国大会において学生奨励賞を受賞(研究分担者・小林一郎氏との共著、筆頭著者は、研究分担者が所属する学生)するなど、高い評価を得ている。 また大規模なデータを収集、蓄積するためのスケーラブルなデータクローリング技術およびデータストア技術の技術調査および数百台規模の計算機基盤での実証検証が進んでおり、その取り組みが評価され、人工知能学会誌においてゲストエディタを依頼され「ビッグデータとAI」特集の企画・刊行し、研究者代表自身も解説記事を寄稿した。 さらに、スケーラブルなサービス基盤の動態状況をリアルタイムに可視化し、ハードウェアからミドルウェアまでを一貫してプロビジョニングする環境を構築し、その有効性を確認した。 これらの成果は、国内論文誌(査読付き)1件、国際会議(査読付き)1件、招待講演1件、国内口頭発表4件、学会雑誌特集号企画1件(解説記事1件含)等で発表しており、順調に成果が出ている。
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今後の研究の推進方策 |
サイバー・フィジカルシステムにおいては、センサー等からの実世界情報の収集・蓄積と活用のためのサービス化が重要である。これまでは主にネット上にある実世界に関する情報を想定し、既存のLinked Open DataおよびWeb情報を対象にしていた。 最終年度は、高齢者や一般向けのヘルスケアおよびライフログ情報、市民アスリートの運動データ等を対象として、ネット上の情報と各種センサ機器から得られる情報の相互リンクしたスケーラブルなサービスの実現を目指して、継続的に収集したデータに基づく、蓄積、解析技術の開発、検証を実施する。 また、センサーによって実世界から情報を収集するのは一般的に高コストであり、ヘルスケアや生体情報などは、個人情報を含むため、入手そのものが困難である。そこで、被験者の同意のもと各種の健康・運動機器から個人情報を匿名化した、研究開発用のベンチマークデータセットを整備する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究課題の最終成果物の一つとして、ヘルスケア/ライフログ情報および運動データを対象とした研究開発用のサンプルデータセットを整備することを計画している。 平成24年度は、データ収集に向けたセンサ機器の整備とテストに留まり、当初想定していたデータ収集実験および整理作業は実施できなかったため、当該助成金(B-A)が発生した。そこで、次年度では、データ収集被験者実験の謝金およびその後のデータ整理、意味的メタデータの整理等ついての作業に係る謝金等に充当する。また最終年度にあたり国内外学術誌への論文発表を予定しており、これらの別刷代等に使用する。
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