研究課題
本プロジェクトでは、人が音の空間性を認識するときの脳活動に着目し、基礎研究を行なうとともに、このような空間性を有する音の聴取時に観察される特徴ある脳活動を利用したブレインマシンインタフェースの開発を行なった。本年度の研究成果は、(1) 最適な電極と潜時の選別手法の提案、(2) 仮想音源の有効性の確認の2点によって、空間聴覚BMIの実現可能性を広げたことにある。(1) 空間情報を付加した聴覚刺激に対する事象関連電位の統計的特徴から、F値に基づいてターゲットと非ターゲット間で電位の差が大きい電極と潜時を選択し、識別性能を最適化する手法を提案した。従来手法に比べて最大8%正答率が改善された。(2)今回は実音源と仮想音源の併用を試みた。脳波実験の結果、併用条件では実音源のみの条件より識別正答率が低下した。P300反応の波形や潜時に、実音源と仮想音源の間で差があり、識別器の学習に影響したことが要因として考えられる。また、併用条件において、実音源と仮想音源のどちらのP300反応がより明確かに個人差が見られた。仮想音源利用の新しい試みとして、公開データベースの頭部インパルス応答を利用したヘッドホンベースの空間聴覚刺激呈示方法を提案した。心理物理実験の結果、方向定位の正答率が90%以上となり、適切な刺激が作成できることが確認された。脳波実験の結果、後頭部において明確なP300反応が観察された。また、空間聴覚BMIの識別性能の向上には、先行する視覚BMIとの共通性や差異を把握することが有用である。日本語の5母音の音声・文字を用い、スピーカによる空間聴覚・視覚・視聴覚呈示によるP300反応を比較した。空間聴覚条件の正答率は他の条件に比べて低下したが、P300反応の振幅が他条件より小さいことが原因と考えられた。P300反応の振幅を増加させる音刺激の出力方法の必要性が示唆された。
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Taylor & Francis, Brain-Computer Interfaces
巻: Volume 1 ページ: 27-49
10.1080/2326263X.2013.876724
Springer Cognitive Computation (Special Issue : Advances on Brain Inspired Computing)
巻: Volume5,Number2
10.1007/s12559-013-9228-x