講演者音声の高品質自動アーカイブ化に資する遠隔音声収録システム技術の確立を目的として,(a) 操舵可能なスポットライト形状の指向性収音ビームを生成するマイクロホンアレイ技術と,(b) 収音音声に重畳する(残留)雑音を抑圧する音声信号回復処理と,(c) 収音音声の明瞭性を改善する音声信号強調処理,それぞれの検討,及びこれら要素技術の統合化に関する検討を進めた. (1)要素技術: 操舵可能なスポットライト型指向性収音ビームを鉛直面内単一指向性と水平面内単一指向性の積で実現することを着想し,鉛直面内に単一指向性をもつ縦方向アレイを横(左右)方向に複数配列する2次元アレイ構成方法を発案した. 収音音声に含まれる残留雑音の低減を目的として,スペクトル減算系の処理(一般化スペクトル減算法,変調周波数領域スペクトル減算法など)を比較検討した.また,音声の明瞭性向上に有効な特徴量(声の高さ,声の高さの変動幅,3 kHz付近のスペクトル・ピーク)を特定し,これら特徴量の制御方法(各々の調整幅,及び組合せ)に関する知見を得た. (2)総合化技術: 指向性収音可能な音声の下限周波数と上記アレイの開口長の関係に起因する大型化の回避を目的として,上記残留雑音低減処理後の声の高さ(基本周波数),及びその倍音を用いる処理により,ヒトの聴知覚の特徴(Missing Fundamental現象)を利用して,開口長短縮による低音感不足を補う信号処理方法を導入し,有効性を確認した.
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