研究課題/領域番号 |
23500217
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松永 昭一 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90380815)
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研究分担者 |
小栗 清 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80325670)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 肺音 / 副雑音 |
研究概要 |
呼気・吸気列全体での副雑音の出現傾向を考慮した異常肺音の検出手法の検討を行った。副雑音は複数の呼吸気で発生しやすいため,個々の呼気・吸気のみの情報だけを用いるのではなく,他の呼吸気の情報を用いることで,突発的に現れる雑音による誤認識を減らせる可能性を探った。他呼吸気の尤度分布の調査を行ったところ,分布に偏りがあることが示されたため,呼気・吸気列全体での副雑音の出現傾向を考慮した手法を構築した。異常肺音の検出実験の結果,提案手法は従来手法と比較して,有意に高い性能が認められ,呼気・吸気列全体での副雑音の出現傾向を考慮した異常肺音の検出が有効であることを示された。また,呼気では正常音,吸気では異常音の検出率が低いことが分かった。提案手法を用いての肺疾患者の検出実験も行った結果,健常者の検出率は向上したが,疾患者の検出率は大きく下がった。次に,複数の聴診箇所の肺音を使用し肺疾患者を検出する手法の基礎検討を開始した。予め定めた閾値を超える呼気,吸気がいずれかの部位に1つでもある場合,疾患者と判定した。実験において、単一の聴診部位で識別した結果と複数の聴診部位で識別した結果を比較すると,より多くの収録部位で識別した方が,疾患者の識別率は向上する傾向にあり,健常者の識別率は低下する傾向にあることがわかった。そして,疾患者と健常者をあわせた識別率は向上する傾向にあるこという結果が得られた。また,従来では,単一部位のみを用いて識別を行っていたことから、その部位で副雑音が聴取できる疾患者しか検出することができなかったが,提案手法を用いることで,より多くの疾患者を検出できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度は肺音全体での大局的な音響的特徴の相関の基礎調査を重点的に行い、この結果を用いて疾患者の識別アルゴリズムの検討を行う計画であった。基礎調査に関しては呼吸気の尤度分布の調査を行ったところ,分布に偏りがあることを発見し,これを用いた識別アルゴリズムを計画通りに作成した。提案手法は従来手法と比較して,異常肺音の検出に有効であることを示すことができたが,疾患者の検出率の向上に課題を残した。また,次年度に行う予定の複数の聴診箇所の肺音を使用し肺疾患者を検出する手法の基礎検討を開始できた。1箇所から4箇所に増やすことでその効果を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、肺音データベースの構築を行い、音響特徴の分析を行う。この調査結果は疾患者識別アルゴリズムにおける大局的統計モデルを作成するための基礎とする。また、複数の聴診データを用いた疾患者検出アルゴリズムの検討(代表者担当)を行う。平成23年度に構築した一つの肺音系列から疾患者を検出する大局的アルゴリズムを拡張し、複数箇所の聴診データから 疾患者を高精度に識別する手法の検討を行う。複数の聴診データには、その明瞭性は異なるものの同種の副雑音が検出される可能性が高い。この特徴を取り入れることで、より頑健で精度の高い疾患者の識別手法を開発する。また心臓音等の雑音に頑健な肺疾患者を検出できる手法を構築する。最終的には24年度の研究で得られる一連の肺音から疾患音を検出する方式に23年度の研究で得られた,局所的及び大局的音響情報を基に疾患者を頑健に識別する手法を統合し,実時間で疾患者を識別する方式を実現する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は143円と少額であり,従来の計画通りに使用する.
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