研究課題/領域番号 |
23500225
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
若原 徹 法政大学, 情報科学部, 教授 (40339510)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 画像マッチング / 変形耐性 |
研究概要 |
1.アフィン変換で記述できる広範囲の線形変形を吸収する画像マッチング手法として、新たにKLダイバージェンス最小化基準を取り上げた。まず、濃淡画像を2次元確率分布として表現して2枚の濃淡画像間のKLダイバージェンスを新たに定義し、次いで上記KLダイバージェンスを最小化するアフィン変換成分を求める非線形最適化問題を定式化し、最後にレーベンバーグ・マーカート法と新規提案の線形近似による反復解法を適用した。人工的にアフィン変換を加えた変形画像間のマッチング実験を行った結果、提案手法の線形近似による反復解法は、レーベンバーグ・マーカート法と比較して、アフィン変換変形耐性、過剰マッチングの抑制、処理時間のいずれにおいてもはるかに優れた性能を示した。これは汎用的かつ有力なアフィン不変画像マッチング手法の新規提案であり、極めて意義が大きい。2.アフィン変換で記述できない非線形変形を吸収する画像マッチング手法として、2次元ワープ法とGAT/LAT法の結合により変形ベクトル場を漸近展開する手法の検討を進めた。この手法では2次元ワープ法により変形ベクトル場が高精度に抽出できることを前提としているが、具体的実装とその最適化を行ったものの、非線形変形への対応能力が不十分であること、およびワープ範囲を拡げると処理時間が膨大となること、が明らかとなった。3.非線形変形を吸収する画像マッチング手法として、「非線形変形=部分と全体の線形マッチング」と規定する新しい観点から、部分と全体の正規化相互相関マッチングで非線形変形を吸収するPAT相関法を提案した。具体的に実装して手書き数字認識に適用した結果、従来のGAT相関法との直列適用により認識精度が大きく向上した。極めて有力かつ有望な手法であり、PAT相関法の定式化をさらに工夫してより高精度化すること、処理時間の短縮を図ること、などの課題が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.広範囲の線形変形の吸収については、研究の目的の第一の課題に記した通り、マッチング尺度として正規化相互相関に加えてKLダイバージェンスなどの情報量基準、最適化手法としてGAT相関法や共役勾配法、非線形最小二乗法などの比較検討を進めることができた。これにより、柔らかな画像マッチングにおけるマッチング尺度および非線形最適化問題の解法の選択について各手法の得失が明らかとなった。2.非線形変形の吸収については、研究の目的の第二の課題に記した通り、2次元ワープ法とGAT/LAT法の結合による変形ベクトル場の漸近展開を実装して実験を進めた。ただ、2次元ワープ法による変形ベクトル場の生成能力に限界があることが判明した。3.非線形変形の吸収について計画していたもう一つのアプローチとして、部分と全体の線形マッチングを実現するPAT相関法の具体的定式化と実装を行い、手書き数字認識に適用して極めて良好な結果を得た。定式化のさらなる工夫による高精度化や処理時間の短縮などの課題が明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
1.広範囲の線形変形の吸収については、振舞いが安定して性能の高い正規化相互相関をマッチング尺度として、最適化法としてのGAT相関法の定式化を改めて見直して高精度化を図る。合わせて、処理時間の短縮により、汎用的かつ高精度なアフィン不変画像マッチング手法として確立する。2.非線形変形の吸収については、部分と全体の線形マッチングにより非線形変形耐性を実現するPAT相関法を最有力手法として、PAT相関法の定式化のさらなる工夫による高精度化を中心に研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度および最終年度となる翌年度とも、国際会議等での対外発表に関わる旅費および会議参加登録費としての支出が主となり、残りは消耗品としての物品費の支出となる。
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