研究課題/領域番号 |
23500225
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
若原 徹 法政大学, 情報科学部, 教授 (40339510)
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キーワード | 画像マッチング / 変形耐性 |
研究概要 |
1. 本研究の基礎となるGAT相関法は、2枚の濃淡画像間で正規化相互相関値を最大化する最適なアフィン変換成分を決定する際、(1) 1枚の画像の総画素数をNと記すと、準最適解を求めるための計算量がNの2乗オーダーとなる、(2) 準最適解を最適解に収束させるために反復解法を用いている、ために多くの処理時間がかかった。今回、GAT相関法の計算モデルの構造を詳細に分析することにより、上記(1)に対して、(a) 変数分離の手法により計算量がNの1乗オーダーとなる、(b) 定型計算をテーブル参照で置き換える、という高速化手段を考案した。この高速化GAT相関法は、従来のGAT相関法と比較すると、マッチング精度は維持したままで、処理時間を約20分の1に短縮できた。 2. 画像マッチングで、学習サンプル数が少なく統計的パターン認識手法が利用できない場合、学習サンプルを全数登録するk-最近傍法が有力である。その際、画像マッチングに変形耐性を持たせると認識能力が大きく向上すると期待される。変形耐性のない単純な相関マッチング、代表的な変形耐性マッチング手法である接距離法、および高速化GAT相関法によるk-最近傍法を手書き数字認識に適用した結果、登録サンプル数の大小に関わらず、高速化GAT相関法は明らかに認識率が高く、かつ処理時間は接距離法の約2分の1に抑制できることが確認できた。 3. 非線形変形を吸収する新たな画像マッチング手法として、2次元射影変換成分を吸収できる汎用的な画像マッチング手法の定式化を行い、計算モデルの骨子を定めた。これをGPT(Global Projection Transformation)相関法と呼ぶことにする。基本アイデアは、2次元射影変換をアフィン変換と部分射影変換の積に等価的に分解した点にある。この分解により、GAT相関法の自然な拡張として計算モデルが構築できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 処理時間の短縮が課題となっていたGAT相関法において、変数分離およびテーブル参照を用いて計算量を大幅に削減する高速化GAT相関法を考案した。これは画期的な成果であり、国際会議ICFHRおよびICPRでの発表でも高い関心と評価を得た。 2. 部分と全体の線形マッチングにより非線形変形耐性を実現するPAT相関法について、部分を指定する窓領域の最適化を核とする定式化の改良を目指したが、具体的なアイデアには結実しなかった。 3. 非線形変形の吸収について、新たに2次元射影変換を取り上げ、2次元射影変換をアフィン変換と部分射影変換の積に等価的に分解できることに着目し、GAT相関法の自然な拡張としてGPT相関法の基本アイデアを定式化できた。これは、今後の大きな展開が期待できる極めて有用な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 高速化GAT相関法は汎用的かつ強力な変形耐性画像マッチング手法であり、公開ライブラリとして提供できるようにする。このため、関連するプログラム群を改めて見直して、コードの整理と最適化を着実に進める。合わせて、成果を学術論文として投稿する。 2. GPT相関法の確立を最重点課題として、(1) 計算モデルの完成、(2) 具体的な実装、(3) 基本的な画像マッチング能力の確認、さらには、(4) 各種認識実験への適用と評価、を行うことを中心に研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際会議等での対外発表に関わる旅費、会議参加登録費および学術論文の投稿・掲載費としての支出が主となり、残りは消耗品としての物品費の支出となる。
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