研究期間全体を通じて実施した研究の成果は次の通りである。 1.KLダイバージェンスをマッチング尺度としてアフィン変換耐性のある新たな画像マッチング手法を提案した。まず濃淡画像を2次元確率分布として表現し、次に2つの2次元確率分布間のKLダイバージェンスを最小化する最適アフィン変換の決定問題として定式化し、最後に最適アフィン変換成分の効率的な反復解法を提案した。国際会議発表で高い評価を得た。2.非線形変形吸収のための2次元ワープ法とGAT/LAT法の結合については、2次元ワープ法の変形対応能力と処理量に問題があることが明らかとなった。一方、PAT相関法については「非線形変形=局所領域での線形変形」として捉える強力な画像マッチング法であることを確認したが、局所領域の指定法に任意性が残った。これらについては今後の継続課題とした。3.処理時間の短縮が課題となっていたGAT相関法において、変数分離およびテーブル参照を用いて計算量を大幅に削減する高速化GAT相関法を考案した。これにより、学習サンプルを全数登録するk-最近傍法との組合せによる強力な画像マッチングの実装が可能となった。手書き数字認識に適用した結果、処理速度を抑制して世界最高水準の認識精度が達成できることを示した。 最終年度に実施した研究の成果は次の通りである。 1.画期的な研究成果である高速化GAT相関法を権威ある海外ジャーナルに投稿して採録・掲載となった。海外からの閲覧回数も多い。2.非線形変形の吸収について、新たに2次元射影変換を取り上げた。2次元射影変換がアフィン変換と部分射影変換の積に分解できることを活用し、GAT相関法の自然な拡張としてのGPT相関法の基本アイデアを定式化して、最適な2次元射影変換成分の効率的な反復解法を考案した。今後さらなる展開が期待できる極めて有用な成果であり、国内研究会発表で大きな関心を集めた。
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