研究課題/領域番号 |
23500235
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
嶋野 法之 近畿大学, 理工学部, 教授 (10257975)
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キーワード | スペイン |
研究概要 |
本テーマは美術絵画の撮影画像データから各画素に対応する被写体の分光反射率を正確に復元し、多様な照明環境下で絵画をカラー画像再現することを目的としている。本年度は美術絵画の分光反射率復元精度評価方法について研究を行った。その結果、評価方法に関して理論的な予測と実験結果が一致し、当該分野で従来一般的に用いられてきた方法よりもより厳密な評価方法を確立することができた。この評価方法を用いて、分光反射率の特徴を用いる高精度な分光反射率の復元方法を美術絵画に適用し、高精度な復元が可能であることを確認し、国際会議で発表を行った。 分光反射率の復元精度がカラー画像再現精度に及ぼす影響を明らかにするためにディスプレイの高精度な測色的な較正を行った。この方法では、室内照明光がディスプレイ表面で反射する現象を補償するような較正を行い極めて正確な再現が可能になり、次年度国際会議で発表予定である。 マルチスペクトラルカメラのノイズ分散の推定をベィーズ推定とMaximum Likelihood(ML)の2つの方法に関して解析的な方法から定式化を試みた。現在解析的な困難さから簡潔な定式化までに至っていないがコンピュータシュミレーションで強引に計算可能なレベルまでには達しているが、当初予定していた簡潔な美しい定式化のレベルにはさらなる努力が必要と思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学習サンプルにオーバーフィッティングしないノイズ分散行列の推定方法を最尤法を用いた簡潔なノイズ分散行列の定式化を試みているが、現在解析的な困難さから簡潔な定式化までに至っていない。また、ベィーズ推定方法によるノイズ分散行列の推定式の定式化を行っているが、分光反射率についての確率密度分布の定式化に時間を要した。特に従来この確率密度分布は多次元のガウス分布を用いているがこの方法はいくつかの本質的な問題を抱えており、新たな密度分布の定式化に注力中である。 分光反射率の復元精度がカラー画像再現精度に及ぼす影響を明らかにするために、ディスプレイの高精度な測色的較正方法を確立し、かつ同一画像に分光反射率の特徴を用いた高精度な復元方法を適用し再現精度を評価する準備は順調に進んでいる。このディスプレイの高精度な較正方法については次年度国際会議で発表予定である。更に、分光反射率の特徴を用いた高精度な復元方法並びにその結果についても既に国際会議で発表済みである。
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今後の研究の推進方策 |
学習サンプルにオーバーフィッティングしないノイズ分散行列の推定方法に最尤法を用いた簡潔なノイズ分散行列の定式化のために幾つかの解法を試みる。この解析的な解法と並行して、研究計画調書に記載した、既に開発したノイズ分散推定方法で求められた分散を対角要素にもつ対角行列と学習サンプルにオーバーフィッティングしているノイズ共分散行列の線形和の形で最適な分散行列を求める方法についても研究を実施する。 この方法のどちらかについて分光感度の最適化を図りマルチスペクトラルカメラを構築する。 分光反射率の復元精度がカラー画像再現精度に及ぼす影響を明らかにするために、高精度に測色的較正されたディスプレイに複数の復元精度で復元された美術絵画の分光反射率を用いカラー画像を再現し評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
ディスプレイの高精度な較正方法やノイズ分散行列の推定に関するいくつかの成果を国際会議で発表するための旅費とノイズ分散推定に必要な数冊の書籍の購入に費用を充てる予定である。
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