研究課題/領域番号 |
23500249
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
上田 悦子 奈良工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (90379529)
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研究分担者 |
中村 恭之 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (50291969)
竹村 憲太郎 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (30435440)
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キーワード | ロボット動作生成 / 優美な動作 / モーションキャプチャ |
研究概要 |
動作に対する形容詞のうち「優美さ」は人間特有のものであるとされている.この点に着目し「優美な」動作をロボットに実装することで,人間らしい動作を実現する事を目指している.そのためのステップとして,これまでスポーツ運動学や美学の分野で,定性的に定義づけられてきた「優美さ」という動作特徴の定量化を試みている. H24年度は対人サービスのプロであるホテルマンの「グラスを手渡す動作」を優美な動作の規範動作と考えて実験を進めた.観光専門学校のホテル学科に所属し2年間サービス動作のトレーニングを受けてきた学生4名の動作データを,モーションキャプチャシステムで取得し(大阪観光専門学校ホテル学科の松本圭市学科長の指導のもと,動作データを取得),解析を行った.特に手先の軌道が「S字カーブを描いているのか?」に着目して解析した.トレーニングを受けた被験者4名と全く経験のない被験者4名のデータを用いて,(1)手先軌道を主成分分析して動作特徴平面を生成,(2)軌道を動作特徴平面上に写像,(3)写像した軌道に対して,2つの3次スプライン曲線でフィッティングし,特徴パラメータを取得.の手順で優美さ特徴の定量化を試みた. その結果,トレーニングされた被験者の「グラス受け渡し動作時」の手先軌道には「主成分分析により得られた動作特徴平面が地面に対して約30度程度傾いている(傾きが小さい)」「動作特徴平面上でS字の軌道を描いている(トレーニングされていない被験者は単なる楕円軌道になっている)」 結果を得た.さらにCGシミュレーションによる印象評価より,「動作特徴平面の傾きは,45度前後が最も優美に見える」こともわかってきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動作タスクの限定を行い,ホテルマンとして十分トレーニングされた複数の被験者による規範データを取得できたこと(ホテルマンの研究協力が得られたこと)で,優美動作の「S字曲線の存在」に関するパラメータ化が進んできたことは,順調な成果と言える.しかし,古典舞踊データを優美さの観点から解析する事までは,まだ出来ていない.この部分についての遅れは依然存在しているが,上述の部分で優美さ特徴定量化への計算方法が得られたことより,総合的に見た結果(2)であると自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は,既に取得しているホテルマンとしてのトレーニングを受けた被験者の「グラス受け渡し動作」「テーブルの上へのグラス・平皿配置動作」を用いて,「対人サービスのプロ動作を規範とした優美さ」に関するモデル化を進めていく. 【1.動作解析】手先軌道にのみ着目した解析に加えて,肩や肘といった腕リンク全体・上半身をも考慮した定量化を試みる. 【2.古典舞踊動作データでの確認】「対人サービスのプロ動作」にみられるS字特徴が,古典舞踊動作データにも見られるのかを確認し,優美さ定量化を一般化する足がかりとする. 【3.モデル化】申請書では「多様体を用いて」モデル化を試みるとしてきたが,多様化のみにこだわらず様々な手法を試みて,「受け渡し動作時における優美さモデル」をまずは提案する.シンプルな手先軌道を優美な軌道へ変換する試みも同時に進める予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
【1.CGデータ作成,動作解析作業補助】得られた特徴パラメータの範囲同定のため,多くの印象評価実験は必要となる.そのためには,多くのCG動作を作成する必要があり,CGの出来具合によっては,受ける人の印象も大きく違うためにきちんとしたCGが必要となる.丁寧な作業が必要となり,時間のかかる作業であるためCG作成作業を行う学生に対して謝金を支払う. 【2.印象評価実験謝金】上記に記述した通りパラメータ同定のために,多人数(多回数)の印象評価実験が必要となる.性別や年齢等の違う観測者による広い視点での評価が重要になることより,印象評価実験協力者へも謝金を支払う. 【3.成果発表のための国内・海外旅費】今年度の成果は5/22-24開催のROBOMEC2013,7/2-4開催のCMEM2013(16th International Conference on Computational Methods and Experimental Measurements@A Coruna, Spain)にて発表する事が決まっている.更に今年度中に国内学会と国際会議での発表も予定している.また複数の英文論文投稿を計画しているため,英文校正費用も計上している. 【4.ソフトウエアライセンス保守】光学式モーションキャプチャシステム用ソフトウエア「Tracking Tools」「Arena」,動作生成用CGソフトウエア「Motion Builder」,解析用ツール「Matlab」の研究に必要不可欠なソフトウエアライセンス保守を今年度も続ける.
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