研究課題/領域番号 |
23500251
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松宮 一道 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (90395103)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 認知科学 / バーチャルリアリティ / マルチモーダルインターフェース / 実験系心理学 / 行動学 |
研究概要 |
本研究では,マルチモーダル感覚情報による手の自己所有感覚生成機構の解明とそのモデル化を目的としている.これまでの研究の多くは,手の自己所有感覚を誘発する際に静止した手を用いており,アクティブな手の動きと自己所有感覚の関係についてはよくわかっていなかった.そこで本研究では,アクティブな手の動きが手の自己所有感覚を誘発するかどうかを調べた.被験者には自分の手は見えないようにし,ディスプレイに仮想的な手を被験者の手から7.5 cm左に離れた位置に呈示し,その仮想的な手が被験者の手の動きと同期して動いた.被験者は60秒間自分の手を動かした後,自分の手の位置を定位し,仮想的な手の主観的印象を評価した.その結果,アクティブに手を動かし,仮想的な手が被験者の手の方位と一致するときに,仮想的な手の自己所有感覚が強く誘発された.これより,手への接触物体がなくてもアクティブな動きによって自己所有感覚が誘発されることが示唆された.また,このような視覚情報とアクティブな手の動き情報の統合により誘発される手の自己所有感覚は身体性自己意識の一つであり,この自己意識は物体の知覚とは関連がないと考えられていた.しかし,本研究により,手の自己所有感覚が手で操作した物体の運動知覚に影響を与えることが明らかにされた.この結果は,身体性自己意識と物体知覚の間には何らかの密接な関係があることを示唆しており,今後はこの両者の関係が意味するところを明らかにする必要があると考えている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画では,手の自己所有感覚の視覚―体性感覚の協調特性を明らかにすることであった.現有の実験装置に少しの改変を加える程度で実験が可能であったこと,また今までの予備的な実験で蓄積した知見が有効に働いたため,本年度は計画通りに実験を進めることができたと考える.
|
今後の研究の推進方策 |
現有の一台だけの触覚デバイスを用いた装置では,単に腕を回すだけの単純な手技操作となっており,日常の物体操作時の手の所有感覚が本実験で評価されているかどうかに関しては問題があると考えている.今後の推進方策としては,二台の触覚デバイスを用いて,把持操作をさせる実験環境を構築することでより自然な物体操作課題が導入できると考えている.現在,この新しい実験環境を構築中である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,二台の触覚デバイスを用いて,把持操作が可能な実験環境を構築するために,新たにヘッドマウントディスプレイを導入する計画である.このヘッドマウントディスプレイの導入により,ディスプレイではなく環境を参照枠とした刺激呈示が可能となり,物体操作に伴い,手だけでなく頭部も自由に動かせる環境を提供できるようになる.これより,現有の装置に比べて,格段に物体操作課題の自然さが増すことが期待される.
|