研究課題/領域番号 |
23500253
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
山内 泰樹 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (60550994)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 視覚情報処理 / 生理的要因 / 国際情報交流 / アメリカ / 等色関数 / 色覚 |
研究概要 |
色覚メカニズムの個人差を生み出す要因の一つである黄斑色素濃度に関する測定は50名の被験者に対して実施し,これまでに報告されている多人種のものとさほど変わらないという結果を得た.この結果は,学術論文として発表した.別の生理的要因として個人の錐体感度のピーク波長,並びに網膜上に分布する錐体比が考えられるが,この両者については,Washington大学のNeitz教授と共同研究体制の整備を行うことが出来た.特に錐体比に関しては,被験者に対する心理物理実験を行う必要があるため,実験システムを構築する必要がある.Washington大学に短期間滞在し,実験システムの原理から光学系等設計に対するノウハウを習得するとともに,実験手法について,共同で検討を行った.現在検討している方法では,精度を高めるとともに,実験が容易になることが期待されている.LEDを用いた等色関数測定システムに関しては,20波長のLEDを用いて実験を行うことが出来る装置を製作し,安定してデータが取れることを確認した.また,従来の方法である,等色を作り出すタスクでの実験手法の確立を行った.しかしながら,従来手法では,(1)被験者の負担が大きくなること,(2)経験の少ない被験者では困難なこと,(3)実験時間がかかる,などの問題があるため,それ以外で等色関数を求めることが可能な手法の検討を行った.本システムや手法に関して,国際学会並びに国内学会にて発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では,初年度では,生理的要因である黄斑色素濃度のデータ収集を主眼に置き,それと並行して等色関数測定装置の製作を実施することであった.それに対し,初年度で黄斑色素濃度に関するデータ収集を行った上に,学術論文として発表を行うことが出来,さらに等色関数測定装置に関しても,製作した上でデータの収集ができることの確認,及び測定方法の検討や予備実験に着手することが出来た.また,当初研究の目的においては記載していなかった錐体比の測定に関しても,一年間でERGを用いた測定システムの検討,並びにシステム構築の準備が完了し,測定方法の検討も実施することが出来た.上記のように,各実験とも,効率向上や精度向上を目指す方法の検討を実施し,予備実験までを行うことで来たので,二年目以降の研究活動が効率よく実施出来ること,数多くの予備実験からの最適な選択が可能になることから,現時点では当初の計画以上に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
生理的特性の個人差データの収集としては,黄斑色素濃度の被験者の追加と,ERG信号からの錐体比,及び遺伝子情報を用いた錐体感度ピーク波長のデータベース構築,を実施予定である.それぞれについて,日本人のデータに関しては新規性が高いため,関係学会において発表及び学術論文誌での発表を目指して研究を遂行していく.等色関数の測定については,実験装置の改良の余地があるため,その検討を実施するとともに,現在継続して行っている新手法の効果を確認した上で,その手法を用いた実験によるデータ収集を行う.従来手法との比較検討が十分になされないと,データの信頼性が高くならないため,その点に十分な注意を払って行っていく必要がある.黄斑色素濃度の色覚に対する影響を調べるため,異種メディア色刺激呈示装置を用いて,中心視野と周辺視野間での等色実験を行う予定である.この実験についても,測定誤差と測定精度が大きく影響を及ぼすことが予想されるため,十分な検討をまず行う必要がある.
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次年度の研究費の使用計画 |
実験装置としては,錐体比の測定装置の製作,異種メディア色刺激呈示装置の製作に対して研究費を使用する.主として光学部品や光源,それを保持する部材や実験を行うブースである.実験成果は国内・国際学会において発表を予定しており,その旅費として使用する計画である.現時点では,9月の台湾での国際学会,1月に東京で行われる学会を計画している.実験を実施するにあたり,被験者および実験者の両者が必要になるので,それぞれに対して謝金を支払う必要があるので,研究費の一部はそこでも使用する予定である.
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