研究概要 |
本研究では、正倉院(東大寺境内、宮内庁管轄)に保管されこれまで宮内庁から写真公開されている御物に描かれている文様をベクター画像化し、色調変換、部分画像抽出、幾何学的配置変換などを可能とし、そのデザインについての嗜好性を、改良された階層化意思決定AHP法を用いて明白にすることで工学的なデザイン指針データを得ることを全体目標としている。 平成24年度は①新規に25点の文様をベクター画像化した。これによって所有するベクター画像データベース数は115点となった。今年度の目標数は35であったため、目標よりも少ないがこれまでの通年目標よりもまだ8多く推移しており問題はない。今年度は光村推古書院から依頼により12月に出版を行うための負荷が大きかったことが目標数をクリアできなかった主因である。出版に際して、新聞記事としての掲載が1件、書評としての掲載が3件、コラムでの掲載が1件あり、デザイン関係書としては異例といえる大きな扱いがなされた。 純粋な研究に並行して企業共同研究を平成23年度の6件に続き、平成24年度に新規2課題を締結するにいたったことは、デザイン界にも一石を投じる研究であるといえる。さらに研究成果の実用化として、奈良繊維組合事業からの要請にて香港ショーでのタグデザイン、県内清酒メーカーより新酒パッケージデザイン、県内素麺業者の箱デザイン、しおりデザイン、県内コープのおせち料理箱デザイン、手帳デザインなどをすべてこの文様デザインデータベースから実施した。 また本研究費助成事業によって正倉院宝物集、昭和22,24,38,39,44年といった古い正倉院展目録が追加入手され一般の方からの閲覧要望に対して応えることができていることは感謝に耐えない。 感性評価支援システムについては本年度中での完成はみていない。
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